朝出かける前など、子どもがなかなか洋服を着てくれなくて困ることはありませんか? 中には、服を着せようとしただけで大泣きしてしまう子も…。特にイヤイヤ期に多いとされるこうした行動。イヤイヤ期専門家に「服を着たがらない子ども」の心理と対処法について聞いてみました。
なぜ子どもは素直に洋服を着たがらないの?

「子どもが洋服を着たがらない理由は、お出かけ前やお風呂上がりといったシーンと、『笑って逃げまわる』『大泣きして嫌がる』など、そのときに取る行動によって違います。」
こう答えてくれたのは、ベビーシッターでイヤイヤ期専門家の西村史子さん。
そこで、「お出かけ前」「お風呂上がり」という2つのシーンと、そのときの子どもの行動別に、洋服を着たがらない理由と対処法を教えてもらいました。
朝などのお出かけ前の着替え
笑って逃げまわる場合
服を着せようとママが追いかけてくることを「遊んでもらっている」と思っているケースが多いようです。「ママともっと遊びたい!」という気持ちが強いので、ママが追いかければ追いかけるほど、さらに逃げまわるという結果に…。
「『時間がないのに!』とイライラすると思いますが、そもそも出かけなくてはいけないのは親の都合です。子どもからすればママと遊んでいるほうが楽しいので、それをやめてまで着替える理由がないんですね。」
【対処法1】
関わらない
「笑って逃げ出しても、反応をしないでください。すると子どものほうが『あれ?関わってくれない』と思い、ママのところに戻ってきます。そこで『服を着替えようか』と声をかけ、それでも逃げたら、声をかけるのもやめましょう。」
そうしていると、かまってくれないことが悲しくなり、ママのところに戻ってくるそう。そのときに『着替えなければいけない理由』を伝え、着替えさせればよいそうです。
「このとき、『裸で外を歩いている人はいないよ』『裸で外に出たら風邪をひくよ』など、着替える理由を『理論だてて』『子どもにわかる言葉で』『簡潔に』伝えることが大切です。あまり長く説明されても、子どもは理解しにくいですから。」
それでも着替えないようであれば、「今は着替えるときです」と言って、泣いても強制的に着替えさせてよいのだそう。ママとの関わりを「遊び」だと思っている以上、子どもが仕掛けてくる遊びには付き合わないことがポイントなのですね。
【対処法2】
ほかの遊びを提案する
おもちゃ遊びに誘うのではなく、「洋服屋さんごっこ」など、楽しいと思えて、ママと関わってもらえる遊びを提案します。
「この時、『お客様、どのオムツがおこのみでしょうか?』『くまさんは、このオムツがお似合いですね〜』などと、ママが一人で洋服屋さんごっこをしてみて興味を引くといいですね。」
笑って逃げまわるのは遊びたいという気持ちの現われ。だからこそ、ママが提案する遊びが楽しそうなら、そちらに興味を示しやすくなります。」
大泣きして嫌がる場合
理由は大きく2つあります。
【理由1】「着替える」という感覚が嫌い・怖い
【対処法】
どんな洋服、状況のときに嫌がっているのか見極める
例えば、洋服の素材が苦手だったり、服についているタグが肌に触れる感覚が苦手だったり、子どもによって嫌がる理由は違います。また、洋服を着るときに一瞬目の前が暗くなる感覚を怖いと感じる子もいるようです。
「素材が嫌なのか、首の締め付けが嫌なのかなど、子どもそれぞれの嫌がる理由を把握し、そういう洋服を避けてあげるのが一番です。また、洋服を買うときに子どもに実際触らせて確認するのもいいですね。」
【理由2】遊びの区切りがついていないのに中断された
【対処法】
「○時になったら着替えるよ」などと伝え、区切りを意識させる
遊んでいるのに、急に「着替えるよ!」などと言って遊びを中断すると、子どもは気持ちの区切りがついていないので泣き出してしまうそう。地団駄を踏むように泣いている場合はこのケースが多いようです。
「『この時間になったらこうします』ということを伝えたら、その時間までは自由に遊ばせてあげてください。そうすれば、子どもなりに少しは区切りを意識できます。」
そうしてその時間になったら、「○時だから着替えるよ」と言って着替えさせます。声をかけずに着替えさせる場合に比べると、いきなり遊びを中断されるわけではないので、子どもも少しは聞き入れやすくなります。
お風呂上がりの着替え

笑って逃げまわる場合
お風呂に入ったことでテンションが上がり、遊びたい欲求が高まっているパターンが多いようです。
「お風呂には、交感神経を刺激して体温を上げる作用があります。入浴後しばらくすれば、体温が下がり眠気が出てきますが、入浴直後はまだ交感神経が優位な状態。脳も覚醒しているので、じっとしていられないんですね。」
【対処法】
関わらない、ほかの遊びを提案する
朝などのお出かけ前の対処法と同じです。ここでの声かけは、「パジャマを着ないと風邪をひくよ」など、パジャマを着る理由を伝えてあげるといいですね。
大泣きして嫌がる場合
「眠いけれどまだ寝たくない、ママと遊びたい」という状況です。入浴後しばらくして副交感神経が優位になると、どうしても眠くなるもの。でも、寝てしまうと遊べないし、一人寝をしている子どもなら「寝たらママと離れなくてはいけない」と思って、寂しくて泣いてしまうこともあります。
【対処法】
「そっかそっか」と抱っこしてあげる
「ここでの『ママと遊びたい』は、『甘えたい』という気持ちの一つ。ですから、『着替える』ということは一旦置いておいて、子どもの欲求を満たしてあげてください。そうしないと、寝るまでずっと泣き続けることになりかねません。」
甘えん坊には着せてあげてOK!

笑って逃げまわったり、大泣きする場合の対処法がわかったところで、もう一つ気になるのが、「自分で服を着ようとしない甘えん坊」の子どもの場合。
こうした場合は、「基本的には甘えさせてあげればいいのでは」と西村さんは話します。
「ママに服を着せてもらいたがる甘えん坊の子どもは、基本的にママとの関わりを求めていることが多いものです。そうした欲求は満たしてあげないと、ストレスになったり、自分に自信が持てなくなったりしがちなので、ママとの関わりの一つとして着替えをしてあげればいいと思います。」
「いつまでも手伝っていると自立が遅れるのでは?」と心配になるママもいるかもしれませんが、幼稚園に入り自分ですることが増えてくると、自然と洋服も自分で着られるようになるので心配はいらないそう。
洋服を着させるのも、今だからできるコミュニケーションの一つ。どうせなら、「かわいいね!」「かっこいいね!」なんて声をかけながら、着替えの時間も楽しめるといいですね。