子どもとお出かけ情報サイト「いこーよ」は親子の成長、夢の育みを応援します!

言葉の発達が遅い?普通?言葉を育てるかかわり方は?

掲載日: 2016年7月4日更新日: 2017年5月16日岡本有紗

言葉が少ないわが子。同じ年齢なのにおしゃべりが得意なお友達。「うちの子、言葉が遅いのかな…?」と、親としては気になりますよね。こんなとき、どうかかわればよいのでしょうか。発達の専門家・秦野悦子さんにお話を伺いました。

生まれたそのときから始まる、母国語のベース作り

生まれたての赤ちゃんは、もちろん話すことはできません。子どもは、いつから、どうやって、言葉を覚えていくのでしょうか?

言葉を覚えるための土台づくりは、生まれたその瞬間から始まります」と秦野さん。

赤ちゃんは、最初は地球上のすべての言語音を聞き分けることができます。しかし、ずっと特定の言語環境に置かれることで、生後6カ月くらいから、その言語に存在しない音声の響きなどはスルーするようになってきます。」

つまり、聞き分ける音声が限定されるということ。もったいない気もしますが、秦野さんは「言葉の発達の大切な一歩」と言います。

「なぜなら、それはその子が『母語仕様の耳と脳』を整えたということだから。分かりやすく言えば、生まれた場所の言語に反応しやすくなった、ということです。」

言葉の発達には、子どもによって大きな幅が…

母語のベースがだいたい固まり、初めての言葉(初語)を話し出す時期が「生後おおむね1年くらい」だと秦野さん。次は、どのように赤ちゃんの言語が発達していくのか教えてもらいました。

最初は『ママ』『パパ』など、単語ひとつで話します。その数がだんだん増加し、やがて『ママ、きた』、『わんわん、かわいい』など、ふたつの単語(二語)をつなげて話せるようになってきます。あえて大まかな目安を上げれば、初語から二語で話すまでの期間は、だいたい半年〜1年後くらいのことが多いでしょう。」

ここで「ただし、お母さんたちに注意してほしいことがあります」と秦野さん。

「1歳前後で単語が出なかったり、2歳で二語に進んでいなかったりしても、それを『遅い』とか『異常だ』と捉えるのは早いです。」

「発達には個人差がありますが、なかでも言語発達の個人差はきわめて大きいものなのです。たとえば、話し出す時期はおおむね1歳と言いましたが、生後9カ月で話した子も、1歳6カ月〜10カ月くらいで話した子も、どちらも『おおむね1歳』ですからね。」

さらに、「進み方も人それぞれ」と秦野さんは指摘します。

「初語が遅くても、急速に語彙を広げておしゃべりするようになる子もいます。おしゃべりする言葉(表出言語)だけを取り出して、いつ、どのくらいに達するのが正常だという線引きは、言葉の発達に関してはとても困難。対人関係や伝えたい気持ち(伝達意欲)、あとでお話する理解言語、発声など、総合的にとらえる視点がポイントです。」

スタート時期も、ペースもばらばら。言葉の発達では、それが当たり前なのですね。


それでも「遅い?」と気になるとき。観察するのはここ!

そうはいっても、子どもの言葉がなかなか進まなければ、親はヤキモキしますよね。そんなときは、お子さんの発する言葉を「観察」してみて、と秦野さん。

「じつは、生後6カ月頃に話す『あーあー』『だーだー』という言葉(喃語:なんご)の発音と、単語を話し出す時期に、なんらかの関連があるようなのです。喃語の中で重要なのが、子音と母音をくっつけて出す『ぱっぱっぱっ(pa,pa,pa)』、『ま、ま、ま(ma,ma,ma)』というような音。こうした音をあまり話さない子や、バリエーションが少ない子は、初語がゆっくり出る傾向がみられます。」

もしそんな傾向があったら、最初から大らかな気持ちで言葉を待ってもいいのでは、と話します。

また、単語で話すようになったら、「理解言語に注目するのがいいと思います」と秦野さん。

「理解言語とは、大人の簡単な言葉を理解して、それに応じる力です。『ちょうだい』と言ったら持っているものを渡してくれる、『ポイして』といったらゴミ箱に捨ててくれる、などです。

実際に言葉を発していなくても、言われていることを分かる力がちゃんとあるなら、2歳半過ぎくらいまでには話す言葉もついてくるはずです。」

もしそうでなければ、理解を増やしていくような働きかけが重要だとアドバイスします。


言葉の発達を促すための、働きかけのコツは?

言葉で表現できる幅を広げることは、子ども自身にとって重要なこと。早め・遅めにかかわらず、より言葉を発達させるために、親はどんなことができるでしょうか。

「話したい気持ちを育てるかかわりが重要です」と秦野さんは言います。

「言葉は、○○に伝えたいという気持ちがあって、初めて発せられるもの。ですから、まずは話しかけること。ママやパパの温かい言葉かけが、生活の中で子どもの中に染み込んでいき、『伝えたい』という気持ちを育てることにつながっていきます。」

しかし、単にたくさん話しかければいいわけではないようです。

「できれば、どうやればその子に伝わるかを考えて話しかけてください。大人と話すより少しゆっくり、短い文で、抑揚をつけてリズミカルに話すのがひとつのコツですね。それから、子どもの興味に沿って話すこと。『面白かったね』『すごいね』など、感情をこめた言葉かけをしていくとよいといわれています。」

また、「その子にとってわかりやすいツボを探すことも重要」と秦野さんは強調します。

「たとえば『ちょっと待って』では理解できず待てない子でも、『待ってね、待ってね』と言い続けていれば、大人の話しかけに注意が向き続けるので待てるということがあります。いろいろ試して子どもの特性を探し、それに合わせた言葉かけを考えてください。」

最後に、子どもの言葉が進まず、焦りや落ち込みを覚えている方に向けて、秦野さんは考え方のヒントをくださいました。

「言葉でなくても、子どもはいつも『何か』を発しています。それを親が受け止め、子どもに応答していけば、そこに『やりとり』が成立します。子どもの投げてくるボールにどう合わせるかを考えるのが、まずは重要。その上で、どうしても言葉の発達が気になるようなら、専門家に相談してみるのもいいでしょう。」

遅い、遅いと親が落ち込んでいると、子どもも一緒に落ち込んだり、焦ったりしてしまうかもしれません。ドンと大きく構えていれば、気づいたときには、楽しいおしゃべりができるようになっているかもしれませんよ。

お話を聞いたのは…

  • 秦野悦子さん

    白百合女子大学・人間総合学部教授。発達心理学(発達語用論、障害児のコンサルテーション、子育て支援)を専門とし、「気になる子ども」の特性に合わせた保育、療育支援ソフトの開発等の研究テーマに取り組む。2015年より、わかふじ幼稚園園長。『子どもの気になる性格はお母さん次第でみるみる変わる』(PHP研究所)、『男の子の育て方―男の子の気持ちがわかる ママの心が楽になる 』(日本文芸社)など子育てに関する一般書籍を近年続々と執筆・出版している。

ライター紹介

岡本有紗

2児と猫3匹を育てるライター。メディカル系専門の広告制作会社でライティングと編集業務を経験後、出産を機にフリーに。得意分野はやはりメディカル系だが、いろいろな分野を経験し幅を広げたいというのが現在の目標。趣味はあえてチープな手段で行く一人旅(休止中)、特技はハモリと絶対音感。

ライターの最新記事

あなたにオススメの記事