子育て中のママはどうしても、日々の家事や育児に追われて、なかなか「がん検診」を受けに行く機会がないですよね。とはいえ、ママの健康は家族みんなにとって大切なこと。そこで、主婦が受けられる「がん検診」の種類や、「がん検診」の大切さについて専門家に聞きました。
子宮頸がんは20代後半、乳がんは30代後半から増加

がんの中でも、近年女性に増えていると言われる、乳がんと子宮頸がん。これらのママたちがかかるリスクがある「がん」は、何歳くらいから増えてくるのでしょうか。
「乳がんは30代後半に急増し、40代でひとつの山を迎えます。一方、子宮頸がんは20代後半から増え始め、30代がピークになります。」
こう答えてくれたのは、公益財団法人「日本対がん協会」の小西宏さん。小西さんによると、女性の死亡原因として多い「がん」は、下記の5つだと言います。
女性の死亡原因で多い「がん」の種類
- 1位 大腸がん
- 2位 肺がん
- 3位 胃がん
- 4位 膵臓がん
- 5位 乳がん
しかし、この中でも女性特有の疾病である乳がんと子宮頸がんは、早期に発見できれば、がんの治療から5年後の生存率が95%以上という調査結果が出ているのだとか。つまり、定期的にがん検診を受けて早期発見できれば、がんが見つかったとしても、長く元気に暮らせる確率が高いということになります。
乳がんや子宮頸がんに限らず、多くのがんは早期発見が生存確率を高めます。早期に見つかれば治癒の可能性も高く、治療の負担額も少なくて済むもの。そのためには、定期的に「がん検診」を受けることが大切です。
それでは、専業主婦が「がん検診」を受ける場合、どのような方法があるのでしょうか。
がん検診は「対策型検診」と「任意型検診」に分かれる
「日本のがん検診は、対策型検診と任意型検診に大きく分かれます」と小西さん。具体的な違いを見てみましょう。
対策型検診
対策型検診とは、市区町村が行っている、「住民検診」などに代表される集団検診のこと。公共的ながん検診として行われ、税金でサポートされているので、無料か自己負担が少額ですむのが特徴です。
任意型検診
一方の任意的検診は、人間ドックのように、個人が自分で任意に受けるものです。自身ががんによる死亡のリスクを避けるために受ける検診とされます。公的なサポートを受けないので全額自己負担となりますが、所属する健康保険組合や企業が助成しているケースもあります。
負担する金額を考えたとき、専業主婦にとって身近なのは、やはり市区町村が行う住民検診。では住民検診は、何歳から受けられて、どんな検査をしてくれるのでしょうか。
子宮頸がんは20歳以上、乳がんは40歳以上が基本

国が推奨する指針に基づくと、住民検診の対象者と主な検査内容は、原則として以下のようになります。
子宮頸がん
- 対象:20歳以上の女性
- 頻度: 2年に1回
- 検診内容:問診と細胞診
乳がん
- 対象:40歳以上の女性
- 頻度:2年に1回
- 検診内容:問診とマンモグラフィによる検診
肺がん
- 対象:40歳以上
- 頻度:1年に1回
- 検診内容:問診とX線間接撮影
大腸がん
- 対象:40歳以上
- 頻度:1年に1回
- 検診内容:問診と便潜血検査
胃がん
- 対象:50歳以上
- 頻度:2年に1回
- 検診内容:問診と内視鏡による検査、もしくはX線検査
住民検診は、健康増進法に基づいて市区町村が実施するもの。ただし、市区町村の考えや財政力によって、費用や検診の対象者に違いがあるのだとか。
「検診の対象者を上記よりも拡大して実施している市区町村もあります。自分の住んでいる地域でどんな検診が受けられるのかは、自治体に直接問い合わせると良いと思います。どんな手続きが必要なのかについても、自治体によって若干の差があるものです。」
検診のお知らせも、市区町村のホームページで案内しているところもあれば、封書で案内するところもあるなど、地域によって違いがあります。日頃から、住んでいる市区町村がどのような健康政策をとり、どんながん検診が、何歳から、いくらで受けられるのか、自己負担はいくらなのか、といったことを、健康診断とあわせて確かめておくといいですね。
ママ自身や夫の職場でも、がん検診を受けられる?
さらに、住民検診以外でも、自己負担額が少なくすむ検診はないのか調べてみました。
ママ自身が働く職場が実施するがん検診
働いている企業の健康保険組合などが実施する健康診断です。健康保険組合などの医療保険者が実施する健康診断が受けられます。パートタイム労働者でも契約期間が1年以上など、一定の要件を満たしている場合は一般健康診断を受けられる場合がほとんど。法律で定められた一般の健康診断に加えて、がん検診をオプションとして取り入れているところもあります。
夫の会社が実施する主婦検診(家族検診)
基本的には、夫の扶養に入っている配偶者や家族が対象。健康保険組合などの医療保険者が実施する健康診断が受けられます。オプションでがん検診や婦人科検診を導入しているケースもあります。会社指定の病院や施設に出向いて、検診を受けることが多いようです。
ただし、こうした職場でのがん検診は義務ではなく、あくまでサービスの位置づけになります。
中には、健康保険組合以外に事業者側ががん検診を行っている場合などもあり、統一的なガイドラインが存在するわけではありません。そのため、対象年齢や費用の負担についても企業によってさまざま。検診を受けるときは、しっかりと内容を確認してから申し込みましょう。
自覚症状があればすぐに病院で受診を

最後に、忘れてはいけないのは、住民検診などの集団検診は、基本的に早期発見を目的としたものだということ。胸にしこりがあるなどの自覚症状がある場合は、がん検診を待たずに、すぐに病院に行きましょう。
なお、自覚症状がある場合は、「検診」ではなく「受診」になるので、同じ検査内容でも健康保険が適用になります。
まずは定期的な「がん検診」、そして気になる症状が見られたらすぐに病院を受診して、がんの早期発見に努めましょう。「日本対がん協会」では、専門看護師や社会福祉士による無料電話相談「がんホットライン」も実施しているので、もし不安な方は相談してみてください。
がん相談ホットライン:03-3562-7830
対応時間:祝日をのぞく毎日10:00〜18:00
がんの不安があったり、がんと診断されたなど、がんにまつわる不安・疑問に対して、匿名で相談できる電話相談窓口。対応するのは、社会福祉士か看護師。国の助成制度など、治療に関するお金の問題についてもアドバイスを受けられる。
★この記事のポイント★
- 子宮頸がんは20代後半、乳がんは30代後半から増加
- 乳がんと子宮頸がんは、早期発見できれば、5年後の生存率が95%以上
- 定期的に「がん検診」を受け、がんの早期発見に努めることが大切
- がん検診は「対策型検診(住民検診など)」と「任意型検診(人間ドック)」に分かれる
- 自分や夫の職場でも検診を受けれるが、対象年齢や負担金額はさまざま