朝6時半。眠い目をこすりながら会場へ行き体を動かす「ラジオ体操」。小学生の夏休みの風物詩ともいえますが、ラジオをつければ一年中あのメロディーが流れています。実は、「ラジオ体操」は子どもの運動能力向上に役立つそう。親子で始める健康習慣にしてみませんか?
ラジオ体操のすごさが見直されている
ここ数年、ラジオ体操ブームが来ているのをご存知でしたか? 「いつでも、どこでも、誰でも」できる体操として健康に関心のある高齢者の間で積極的に取り入れられているとか。そんなラジオ体操の「熱気」を語ってくれたのは、昭和46年から平成11年までの28年間、NHKラジオ体操の先生として活躍した青山敏彦さん。

姿勢がよくなって筋力がつく
高齢者はもちろんのこと、子どもたちには「姿勢教育」にラジオ体操を活用してほしいと青山さんは強調します。
「体力測定をすると、最近の子どもたちは体こそ大きくなっていますが、筋力が弱くなっています。体を支える能力、瞬間的に力を出す能力は、体幹つまり姿勢が何よりの基本です。スマホやゲーム、パソコンで背筋が丸くなっているために筋力の低下を招いているのではないでしょうか」
近年、文科省の学習指導要領からも体操が削除され、学校行事や朝礼の準備体操として活用されないケースも増えました。時代に合わないとラジオ体操を改変する試みもありましたが、調べれば調べるほどラジオ体操の運動効果が判明したそうです。
「昭和26年に作られたラジオ体操第一は、現在のようなスポーツ医学に基づいていたわけではありません。しかし、医師である中村格子さんの著書『実はスゴイ! 大人のラジオ体操』によると、ラジオ体操第一をしっかりやると650ある体全体の筋肉のうち、7割〜7割5分、つまり400を超える筋肉が動かされているとわかったのです。ラジオ体操をすると全身の筋肉が動かされて体幹が鍛えられるというわけですね」
もちろんラジオ体操を1回しただけでは効果は出ません。反復して習慣にすること。これによって体の代謝がよくなり、健康維持・健康増進、体力向上へとつながります。これが、子どもの運動能力の基盤となるのです。
もっと楽しく効果的に体を動かすポイント
そこで青山さんに、ラジオ体操がもっと楽しく、もっと運動効果が上がるポイントを教えてもらいました。ここでは、特に意識しやすい二つの動きをとりあげます。
【伸びの運動】上へ伸ばすと下へ引っ張るを同時に意識する

ラジオ体操第1の最初の運動です。私が、「この動きは深呼吸ですよね? 一番最後の動きと同じ…」と言うと、「そう思っている方が多いのですが、まったく別の運動なんですよ」と青山さん。
「これは背筋を伸ばす運動です。普通、背伸びしましょうと言うと、かかとが上がりますよね。この動きではあえてかかとを床に押しつけます。上へ伸ばす運動と、足で下へ引っ張る運動、その両方の綱引きをしてください。自然と背筋を伸ばすように習慣づけておくと、肩こり・腰痛にも効きます。猫背スタイルの生活から抜け出しましょう」
【腕を上下にのばす運動】全身に力を入れて、きびきびと動こう

では次に、ラジオ体操第1の8番目の運動を。13ある運動の中盤にある特徴的な動きですね。
「ゆったりではなく、きびきびと。力強く素早く動きましょう。腕を上に伸ばす時は、やりを突き出すように。すると体全体が引き締まり、全身の筋力がピッと強くなります。また、瞬発力がついて転倒予防にもなります。親子でどちらが早く次の動きに移れるかを競争しながらやってみてください」
なるほど、一つひとつの運動にイメージを持つことで、とりあえず音楽に合わせようといった動きから効果的な体操へと変化するはず。まずは上の二つの運動から意識して、今まで以上にラジオ体操の恩恵を受けちゃいましょう。
朝10分、明日から始められる健康習慣
夏休みじゃなくても、わざわざ会場へ行かなくても、通勤通学前にできるラジオ体操。集合住宅住まいのわが家はジャンプの足音にこそ注意が必要ですが、広々したスペースもいらず、明日から始められそうです。
「おじいちゃんおばあちゃん世代、お父さんお母さん世代、子ども世代の3世代でぜひラジオ体操を始めてみてください。今は小さいうちから個室が与えられ、世代間の関わりが少ない家庭も多いと思います。ラジオ体操は、世代を超えて一緒に楽しめる日本の文化でもあります。まずは、ラジオ体操の10分間だけ一緒に体を動かしてみてください。家庭の中の共通の話題がそこから生まれるかもしれませんよ」

ラジオ体操の放送時間は、NHKラジオ第1で毎朝6時30分〜のほか、NHKラジオ第2で日曜を除いて8時40分〜、12時〜、15時〜の回も放送。朝の時間がとれない人も、お昼や午後のリフレッシュに気持ちよく体を動かしてみてはいかがですか?