女性にとって人生の一大イベント、出産。赤ちゃんと始まる新生活は楽しみである一方、産後、夫に頼れない、周りにサポートがない場合は、不安の大きい方もいるでしょう。そんな方にご紹介したいのが産後ケア施設。出産後、数日から2週間ほど入院し、心身を労わり、育児への不安を自信に変えていく、そんな役割を担うといいます。どんな施設なのでしょうか。
「赤ちゃんとの暮らし」をシミュレーションできる
訪れたのは、東京都世田谷区のアクア・バースハウス。「わたしらしいお産」をモットーに、水中出産や自宅出産なども行う助産院です。2012年より産後ケア入院を開始し、ひと月に1人〜2人のペースで産後間もないママを受け入れています。
アクア・バースハウスで出産したママが、引き続き産後ケアを利用するのかと思いきや、「そうではない」と院長で助産師の高橋ゴールドマン浩美さんは話します。
「産後ケアを利用される方は、じつは別の病院などで出産した方も少なくありません。不安を持ったまま育児生活がスタートし、産後うつに近い状態になって駆け込むように来られる方もいます。出産し退院したものの、『生活の中に子育てが入ってくることが想像できない』とおっしゃる方や、産後の体に不安を抱いている方が多くいらっしゃいます。そのため、ママたちが、『自宅に帰ってからもだいじょうぶ』と自信を持って赤ちゃんとの生活に入っていけるよう、ここに滞在している間に私たちがお手伝いします」
産後ケアを利用する人の8割は初産。年齢的には30代後半や40代のママが中心だそうです。出産を控え、産後についても具体的に考え始める妊娠中期に申込みをする人が多いとか。では、産後ケア施設での一日を見ていきましょう。
バランスのとれた食事、育児や母乳の指導も受けられる
アクア・バースハウスは閑静な住宅街にある一見「ふつうのおうち」。病院に入院するというより、里帰り出産するようなくつろぎを感じられそうです。
1階は和室の多目的ルーム。2階には入院する個室が3部屋あり、出産する人と産後ケアの人が兼用します。3部屋のうち1部屋が洋室(ベッド)、2部屋が和室(ふとん)。寝具はいずれもダブルサイズで、ママと赤ちゃんが一緒に寝るほか、パパも無料で宿泊できます。
食事は、3食すべて和食を基本としたバランスのとれた食事が提供されます。ごはん、味噌汁、焼き魚、煮物や小鉢が主なメニューです。野菜や海藻をふんだんに使ったビタミン・ミネラルの多い食事で、消化のよい茹でたもの、焼いたものが中心。
個室で食べたり、1階で助産師の高橋さんやほかのママたちと一緒に食べることもできます。「ゆっくり食事する」というのは、産後自宅で過ごしていたら、なかなかできそうでできないことなので、これだけでもうれしいですね。
8時、12時、18時〜19時の食事のほかは、赤ちゃんと一緒に眠ったり、授乳したりして「赤ちゃんのペース」で過ごします。料理・洗濯・掃除など、こまごまとした家事から解放され、赤ちゃんに向き合うことができます。もちろん、ママがお風呂に入るとき、たっぷり睡眠をとりたいときは、高橋さんを合わせた2名の助産師が赤ちゃんを見ていてくれます。
新米ママが悩むことが多い母乳についても、高橋さんがしっかりアドバイスしてくれるので安心です。さらに、沐浴指導や赤ちゃんのあやし方、育児指導は、パパの時間が許す限り一緒に行います。
アロママッサージや鍼灸などのオプションも充実
気になる費用は、3食、洗濯、授乳・育児指導を含めた24時間体制のサポートで、1泊2日、5万6000円。その後は1泊ごとに2万8000円がプラスされ(7泊8日からは割引適用も)、3泊〜4泊する人が最も多いそうです。
オプションサービスとして、鍼灸、アロマオイルマッサージ、整体、カウンセリングやセラピーなどを個室で受けることもできます。産後の心身の疲労をほぐし、リラックスする時間を持てるのも産後ケアならではの楽しみですね。
さらにアクア・バースハウスでは1階多目的ルームで、ベビーマッサージをはじめ、さまざまな親子クラスを定期的に開催しているので、顔を出してみてもよさそうです。退院後も、こうした交流会に参加したり、高橋さんが無料の電話相談を行ったりしていることも非常に心強いと感じました。
孤軍奮闘しないためにサポートサービスの活用を
こうした産後ケア施設は、筆者が数年前に滞在していた韓国では一般的でした。日本では、東京都世田谷区の武蔵野大学附属 産後ケアセンター桜新町が2008年に全国で初めて開所。その後、産後ケアを扱う施設は全国で増え、利用者も年々増えています。
武蔵野大学附属 産後ケアセンター桜新町のように、比較的大きな施設で受け入れ人数も多い産後ケアもあれば、アクア・バースハウスのように個人の助産院や産院で、それぞれの特色を生かした産後ケアもあるので、まずは問い合わせてみることをおすすめします。
産後はホルモンバランスが崩れやすく、「産後うつ」もたびたびメディアで取り上げられています。それに加えて、都市部では核家族が一般的になり、ママが孤軍奮闘しやすいのも現実です。そうならないためにも産後ケア入院のほか、自宅に派遣される産後ヘルパーや自治体のサポートサービスを活用するのもよいかもしれません。