幼い子どもは恐怖心から耳掃除を嫌がることが多いですよね。泣き叫ぶ子どもを押さえて耳垢を取り除くことは、親にとってもかなりの負担です。ところが、最近は「毎日の耳掃除は必要ない」というのが定説なのだそう…! そこで、小児耳鼻科医の笠井創先生に子どもの耳掃除の必要性についてわかりやすく教えていただきました。

新生児は毎日耳掃除が必要って聞いたけれど…?
赤ちゃんが産まれたばかりの頃は、産院で沐浴の後に毎日耳掃除をするように指導された方も多いのでは? 我が家でも1才になる息子に、赤ちゃんの頃からずっと変わらず、毎日の習慣として耳掃除をしていたのですが、最近「子どもは毎日耳掃除は必要ない」と聞いてびっくり…!
早速、赤ちゃんと子ども、それぞれの耳掃除の必要性の違いについて、笠井先生に尋ねてみました。
「新生児は、胎内にいるときにできた胎脂と呼ばれる汚れが、耳に詰まっているので、それを耳掃除で取り除く必要があるのです。だいたい生後6ヵ月頃までは、沐浴の時に耳掃除をしてあげてください。めん棒にオリーブオイルを少量垂らし、耳の入り口の見える範囲をそっと触れる程度に優しく掃除するくらいで十分です。」
しかし、その後は「毎日の耳掃除は必要ない」と笠井先生。
「耳は掃除をしなくても、自ら耳垢を外に押し出す自浄作用があります。耳の穴の皮膚は新陳代謝をしながら少しずつ移動して、耳垢を自然と耳の外へ運び出してくれるんです。ですので、この自浄作用が機能している正常な耳の場合、それほど頻回に耳掃除をしなくても良いんです。」
なるほど、赤ちゃん独特のねっとりした胎脂と違って、子どもの乾いた耳垢は自浄作用で勝手に出てくるから、毎日掃除する必要はないのですね。
耳掃除をすることで起こるトラブルが多い!
むしろ、耳をキレイにしようと頻回に耳掃除をすることで、かえって害になることも多いのだそうです。
「耳の中を無理にいじると、そこからばい菌が入ってただれてしまい、外耳炎になってしまうことがあります。また、耳掃除を嫌がって暴れる子どもの耳垢を無理矢理取ろうとしたり、乱暴なやり方で耳掃除をしたりすると、外耳道や鼓膜、場合によってはさらに奥にある中耳・内耳にまで損傷を起こしてしまうこともあります。耳の中は基本的には触らないのが一番です。」
耳掃除をすることで耳垢を耳の奥に押し込んでしまう場合もあるそうです。毎日耳掃除をするのはやめた方がよさそうですね。
子どもが耳を気にしていたら耳鼻科へ!
毎日の耳掃除は必要ないとはいっても、放置しすぎはNG。耳垢によって起こるトラブルもあるそうです。
「耳垢が溜まり外耳道という耳の入り口部分をふさいでしまう耳垢栓塞(じこうせんそく)という病状もあります。この場合、耳の中で耳垢ががっちりと固まってしまい、家庭で耳垢を取り除くことはまず無理なので、耳鼻科に行って適切な処置で取り除いてもらう必要があります。」
お風呂に入ったときに、固まった耳垢がふやけて膨らみ耳の中を圧迫するため、痛いと感じる人も多いのだとか。外耳炎を生じて化膿するケースもあるので、子どもが痛がったり、耳を気にしたりなど、何らかのサインを出したときには、すぐに耳鼻科で診てもらいましょう。
「通常の耳垢であっても、鼓膜が見えない状況は正常ではありませんから、除去しておくべきです。」
毎日耳掃除をしなくてもよいからといって、子どもの耳に全く無関心になるのではなく、定期的に耳の中をチェックしてあげたり、普段から子どもの様子に注意するなどの気配りはしてあげましょう。
耳鼻科に行って耳掃除をしてもらおう
では結局のところ、耳掃除はどのくらいの頻度で行えばよいのでしょうか?
「耳掃除をする頻度は耳垢の性状や外耳道の状況など個人差がありますから、一概には言えません。全く掃除をしなくても問題ない人から、耳鼻科で頻回に治療しなければいけないような耳垢の溜まりやすい人や、炎症を伴う人まで様々です。
たとえば、耳垢がねばねばしていたり、耳の穴が狭くて耳垢が溜まりやすいなどの特徴があれば、耳鼻科で定期的に耳掃除が必要になる場合もあります。その子に必要な耳掃除の頻度は、耳鼻科の先生が耳の状態を見てアドバイスしてくれますよ。」
専門家に診てもらい、親が自分の子どもの耳についてきちんと知っておくことが大切なのですね。
もしかすると、耳掃除のためだけに子どもを耳鼻科に連れて行ってもよいものかと躊躇してしまうお母さんもいるかもしれませんが、「耳掃除をしに来るお子さんもたくさんいらっしゃいますよ。安心していらしてください。」と笠井先生。
子どもの耳のトラブルを予防するためにも、一度耳鼻科に行って耳掃除をしてもらうのが賢明ですね。赤ちゃんの時からなんとなく毎日の耳掃除をしてきた方も、これを機に耳鼻科にかかってみてはいかがでしょうか。