子供の食べる量が少ないと、子供の成長や栄養バランスが心配になる親も多いはず。
そこで今回は、子育て両立・共育支援事業を行う「エスキッチン」で食育サポーターとして活躍する管理栄養士の黒氏文佳(くろうじ・ふみか)さんに、「食が細い子供への対応」について、原因や食べさせ方の工夫、食への興味関心の持たせ方などを教えてもらいました。
子供の食が細い? 食事の適量とは

そもそも子供の食事の適量は、どのくらいなのでしょうか。
「厚生労働省が定める『日本人の食事摂取基準2020年版』によると、1日に必要なエネルギー量は、1歳〜2歳児で1日900〜950kcal、3歳〜5歳児で1日1,250〜1,300kcalとされています。成人女性に必要とされる1日のエネルギー量が2,000kcal程度なので、幼児の食事量はママの半分くらいを目安にするとよいでしょう」
「幼児は栄養バランスのとれたものをたっぷりとる必要がある時期のため、菓子類の摂りすぎに気をつけ、主食や主菜、副菜を揃えて、できるだけ多くの品目の食品を摂るように心がけることが大切です」
【年齢ごとの1食の目安量】


「主食や主菜、副菜のほかにカルシウムを補うため、どの年齢でも牛乳などの乳製品を1日に200ml〜300ml程度は摂るのが理想です」
「上の表はあくまでも目安で、食事量には個人差があります。成長のためにはバランスの良い食事でさまざまな栄養素を取り入れることが大切ですが、3食の食事で足りない分は1日1〜2回のおやつで補ってあげましょう」
また、生活リズムや日によって食事量が変わることもあるので、1週間程度の食事量で様子を見ることも大切です。
子供の食が細い原因とは?

それでも子供の食が細いと感じる場合には、どうしたらよいのでしょうか?
「食事量が少ない子供の原因には、さまざまなパターンがあります。自分の子供がどのパターンなのかを考え、それにあわせた対処をとることが大切です」
睡眠不足
胃腸は睡眠中にも動くため、寝ている間に消化が進み、起床後は空腹感を感じやすくなります。十分に睡眠がとれていない場合は、その分消化の進みが悪くなるので、食欲も減退してしまいます。
運動不足
よく身体を動かしておらず、そもそもお腹がすいていない場合もあります。日中は公園などに行き、できるだけたくさん身体を動かすようにしましょう。体を動かせなかった日は食事を少なめにするなど、運動量にあわせて食事量を工夫してください。
間食の摂り過ぎ
お菓子の食べ過ぎや、ジュースの飲み過ぎも食事に影響が出てしまいます。常時、または食事の前に甘い飲み物を飲ませたり、お菓子をだらだら食べているのもお腹が空かない原因になります。間食と食事の時間をあけることも大切です。お菓子は子供がたくさん欲しがっても、決まった時間に決められた量だけを食べさせましょう。
体調不良
大人と同様に、体調によって食事量に波がある場合もよくあります。子供の様子をしっかりと観察し、体調が悪いときは無理に食べさせないようにしましょう。
生まれつき少食
食事量が目安より少なくても、その子供にとっては適量という場合もあります。子供の成長には個人差があるので、身長や体重が母子手帳に記載されている成長曲線から大きく離れていなければ問題ありません。元気にすくすく育っているのであれば、あまり気にしなくて大丈夫です。
子供の食欲をアップさせる方法

それぞれの原因にあわせた対応をした上で、食が細い子供に少しでも多く食事を食べさせる方法があれば教えてください。
「子供の食欲をアップさせる工夫として、おすすめは次の4つです」
1.食事の回数を増やす
一度にたくさんの量が食べられない場合は、1日の食事回数を4〜5回に分けるといいでしょう。例えば、朝・昼・夕食のほかに、10時・15時に捕食として補う方法です。1回の食事で食べる量が少なくても、食事の回数を増やすことで、不足したエネルギーを補うことができます。
捕食として追加する2回の食事はおやつでも良いですが、ポテトチップスなどのスナック菓子やチョコレート菓子ではなく、おにぎりや芋など腹持ちがよいものがおすすめです。
2.「完食」の成功体験を増やす
たくさん食べてほしいという気持ちからついつい多めに盛り付けてしまいがちですが、子供が完食できる量の食事を出すのがポイントです。食が細い子供は、最初からたくさんの量の食事が出されるとプレッシャーや負担に感じてしまうこともあります。
少なめの量の食事を出して、子供が完食できたらよく褒めてあげてください。完食できたことへの成功体験が自信へと繋がり、食事への意欲が生まれます。
3.「食」への関心を引き出す
食への興味が薄い場合は、食事のメニューを決めたり、食材の買い物に行くところから子供と一緒に行うのがおすすめです。また、調理や味見、盛り付け、配膳、お片付けなどのお手伝いをしてもらって食事作りに関わらせることで、食への関心も高まります。
野菜を切る際に「どのように切るのか」「中身は何色か」子供に考えさせるなど、食事作りの中で子供の、興味を引き出すような声かけをすると、さらに効果的です。
お皿やスプーンなどの食器を一緒に選んで、子供のお気に入りのものにするなど、とにかく子供が食事を楽しみになる工夫をしてみましょう。
4.食事の環境を整える
食事に集中できる環境も大切です。食事中はテレビを消したり、子供の見える場所におもちゃを置かないなど、子供が食事以外のことに気をとられないように工夫しましょう。
また、子供に合ったテーブルと椅子で食事をさせることも大切です。足が床に届かない状態では姿勢が安定しないため、食事に集中できません。噛む力も入りにくくなるので、足が地面についた状態で食事ができているかどうかも確認してください。
食が細い子供には、さまざまな原因と対処法があることがわかりました。まずは子供が食事を楽しめる環境を作ることが大切です。それぞれの子供のペースにあわせて、見守ってあげたいですね。