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「膀胱炎」は大人も子供も要注意! 症状・原因・治療・予防法も

掲載日: 2020年5月13日更新日: 2020年5月13日近藤 浩己

子供がトイレを我慢したり、あまり行きたがらないことで「膀胱炎」を心配する親もいるはず。そこで今回は、膀胱炎の原因や治療、予防法などについて、東京女子医科大学泌尿科非常勤講師の迫田晃子先生に話を聞きました。

「膀胱炎」の主な原因は?

そもそも、膀胱炎とはどのような病気なのでしょうか?

尿道口から侵入した大腸菌などの細菌によって、膀胱の粘膜が炎症を起こした状態のことです。細菌は基本的に膀胱に侵入しないのですが、尿道口と肛門は距離が近いので、まれに侵入してしまうことがあります」

「定期的にしっかり排尿できていれば、細菌は尿と一緒に体外に排出されますが、大腸菌は4時間で10万倍に増えると言われています。長時間トイレを我慢するなどして、膀胱内に細菌がとどまっていると、発症するリスクが高まります

「トイレを我慢すると膀胱炎になる」とよく聞きますが、こまめに排尿することが膀胱炎の予防には大切なんですね

女性と赤ちゃんは膀胱炎になりやすい

大人と子供で、膀胱炎のなりやすさに違いはあるのでしょうか?

大人の方がなりやすいです。社会的にトイレを我慢する機会も多いですし、女性は出産をきっかけに膀胱炎になる人もいます。また、男女で比較すると女性の方がなりやすい病気でもあります

女性がなりやすい理由はなぜでしょうか?

「女性は男性に比べて尿道が短いので、細菌が膀胱に侵入しやすいからです。さらに、初潮を迎えることで、膣や尿道にいる常在菌の種類が変わります。常在菌は、悪い菌から身体を守ってくれる微生物の集団ですが、初潮を迎えると集団の構成が変わり、膀胱内に侵入してくる細菌の種類が増えます」

女の子の場合は、初潮を迎えたあとは、とくに注意してあげたいですね。

子供の場合は、おむつをしている乳児期も注意が必要です。おむつの中でウンチをするため、大腸菌が尿道から侵入しやすいからです。尿道が短い分、女児の方がなりやすいですが、男児でもなることはあります」

乳児期の膀胱炎を防ぐためにも、なるべく早くおむつを交換することが大事ですね。


膀胱炎のリスクは便秘でも!

トイレを我慢しないほかに、気をつけることはありますか。

便秘がちだったり、排尿習慣が悪いと、膀胱炎の発症リスクは高くなります。水分摂取量が少ない場合、尿量が少なくなり、排尿の間隔も空くので、こまめな水分摂取を心がけましょう」

「また、子供はトイレが汚い、ウォシュレットが嫌いなど、さまざまな理由でトイレに行きたがらないことがあります。保護者が声かけしながらトイレに行かせるなど、排尿を我慢させないように注意しましょう

「また、便秘で直腸内に便が留まっていると、菌が侵入するリスクが高くなるので、便秘にも注意が必要です

便秘も膀胱炎の原因になる可能性があるとは驚きですね。

「膀胱炎」の主な症状

では、膀胱炎になると、どういった症状が見られるのでしょうか。

一般的によく見られる症状は、頻尿と排尿痛です。15分おきくらいでトイレに行きたくなったり、排尿時に違和感を感じる場合は、膀胱炎の可能性を疑います。そのほか、尿が濁る、尿の匂いがきつくなる、尿の色が濃くなる、血尿といった症状が出ることもあります」

大人と子供で症状に違いはあるのでしょうか?

「基本的には同じです。ただ、小さな子供は排尿時の違和感をうまく表現したり、伝えられないので、気付くまでに時間がかかる場合があります。尿の濁りや匂い、色に変化がないか、保護者が普段から確認しておくことが大切です

「おむつを着けている子供の場合は、おむつ替えの際に尿の色や匂いをチェックする習慣をつけておきましょう。自分でトイレに行ける年齢になったら、トイレの頻度をある程度把握しておくと安心です

発熱などの症状が出ることはないのでしょうか?

「膀胱炎が原因で熱が出ることは、基本的にありません。膀胱炎のような症状があるときに高熱が出る場合は、腎盂腎炎といった上部尿路感染症の疑いがあります

「腎盂腎炎は、39〜40度の高熱が出ることもあります。また、上部尿路感染症は、高熱が一晩で下がり、数日してから容態が悪化するケースもあります。これらの病気が疑われる際には、解熱剤などですぐに熱が下がった場合でも、念のため病院を受診した方が安心です

そのほか、症状が似ていて間違えやすい病気はありますか?

過活動膀胱や心因性頻尿なども膀胱炎と症状が似ています。過活動膀胱は、尿が溜まっていないのに膀胱が勝手に収縮をして尿意をもよおすもので、頻尿や失禁といった症状が見られます。最近大人の女性で増えている病気ですが、子供でもなり得ます」

「子供の場合は、おもらしをしてひどく叱られたことが原因で、膀胱の収縮と尿道が開くタイミングが合わなくなり発症するケースもあります。このように排尿に対するストレスや便秘、膀胱炎がきっかけで起こることもあります

「心因性頻尿は、主にストレスが原因で起こる頻尿で、症状は過活動膀胱に似ています。心因性頻尿も過活動膀胱も、症状だけでは膀胱炎と区別するのは難しいので、頻尿やおもらしがなかなか治らないときは病院で診てもらうといいでしょう


膀胱炎の治療法は大人と子供で違う!

膀胱炎になってしまったら、どういった治療をするのでしょうか。

大人の場合は抗菌剤を処方されるケースが多いですが、子供の場合は基本的に生活指導を行います。大人でもそうですが、耐性菌が生じて抗生物質が効きにくい身体になってしまう可能性があるからです」

一定の頻度でトイレに行けるように排尿習慣を整えたり、水分をしっかりと採る、便秘を治す、といった生活習慣の改善がメインの治療になります。ちなみに受診するのは、小児科でも泌尿器科でも大丈夫です」


具体的な生活習慣の改善はどういったことに気を付ければよいのでしょうか。

「まずは、子供が1日に行くトイレの回数を把握します。目安としては、3時間ごとに1日6回くらいのペースです。それよりも少ない場合は、トイレを促すなど排尿習慣をサポートしてあげてください」

トイレに行くこと自体を嫌がる場合は、理由を聞いてあげましょう。トイレが汚いから行きたくない、ウォシュレットが苦手など、聞けば理由と改善策がわかることもあります」

ウォシュレットは使った方がいいのでしょうか?

「無理に使う必要はありません。すっきりとした排泄ができていれば、ティッシュで拭くだけで特に問題ありません

ほかに大事なことはありますか。

水分をしっかり補給することも大切です。1日の目安量としては、3〜5歳で500〜800ml、小学生で800〜1000mlです。夏場は汗をかいたら適宜、水や麦茶を飲ませるようにしましょう」

水分補給は大切ですが、甘いジュースやスポーツドリンクは糖質が多いので飲み過ぎには注意が必要です。緑茶やコーヒーなどカフェインを含む飲料も、利尿作用によって脱水を引き起こすリスクがあるので、摂りすぎに注意しましょう。

「また、便秘対策として、バランスの良い食事を心がけるのも大切です。排便の回数は、1日3回出る子供もいれば、3日に1回しか出ない子供もいます。個人差が大きいものなので、決まった時間に排便ができているかなど、その子なりのリズムで排便ができているかをチェックしてあげましょう」


生活習慣を改善すれば、再発も防げるのでしょうか?

膀胱炎そのものは決して再発しやすい病気ではないので、生活習慣を変えれば再発しにくくなるはずです。ただし、おしっこが腎臓に逆戻りする『膀胱尿管逆流』など先天性疾患が原因のものもまれにあります。生活習慣を変えても再発を繰り返すようであれば、詳しい検査を受けることをおすすめします」

生活習慣が主な原因となる膀胱炎で再発を繰り返す場合は、病院で詳しく診てもらいましょう。

水分補給や便秘対策は、膀胱炎だけでなく、健康な身体づくりにも欠かせない生活習慣です。ぜひ親子で意識して、生活してみましょう。

お話を聞いたのは…

  • 迫田晃子(さこだあきこ)さん

    迫田晃郎クリニック院長、東京女子医科大学泌尿器科非常勤講師、聖路加国際病院非常勤

    東京女子医科大学では小児の泌尿器科疾患をメインに子供から大人まで排尿にかかわる疾
    患を担当。迫田晃郎クリニックでは地元のかかりつけ医として地域医療に携わっている。
    モットー:みんなを笑顔に。好きな言葉は「Where there is a will, there is a
    way.」。小児泌尿器科学会認定医、小児外科専門医、小児がん認定外科医、外科専門医、
    消化器外科専門医その他。

  • 迫田晃郎クリニック
  • 小児の泌尿器疾患
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ライター紹介

近藤 浩己

1974年生まれ。ライターズオフィス「おふぃす・ともとも」のライター。トラック運転手からネイルアーティストまでさまざまな職を経験。しかし幼い頃から夢だった「書くことを仕事にしたい!」という思いが捨てきれずライターに。美容・ファッション系ライティングが得意だが、野球と柔道も好き。一児の母。

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