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「水疱瘡」の原因・感染経路・症状・治療法 間違えやすい病気も

掲載日: 2020年5月14日更新日: 2020年5月14日近藤 浩己

水疱瘡(水ぼうそう)は、子供が注意したい感染症の一つです。また、大人がかかると重症化する恐れもあるそうです。そこで、国立成育医療研究センター感染症科の松井俊大先生に、水疱瘡の症状や感染経路、治療法、ワクチンの接種方法、間違えやすい病気などについて聞きました。

水疱瘡の症状は?

水疱瘡とは、どういった病気なのでしょうか。

水痘・帯状疱疹ウイルスの感染によって生じる感染症で、全身にかゆみを伴う水ぶくれの発疹ができるのが特徴です。発疹ははじめ赤く、次に小さな水ぶくれになり、かさぶたへと変化したのち剥がれ落ちます」

「ほかの原因による発疹との違いとして、手足よりも胸やお腹、背中に多く出現し、頭皮にまで見られることが挙げられます。赤いもの・水ぶくれ・かさぶたと、経過の異なる発疹が身体に混在するのも特徴の一つです

「また、初期症状として38度以上の発熱が数日続くこともありますが、40度以上の高熱となることはありません。予防接種をしている人が感染した場合は、熱が出ないことや、発疹が少ないなど、症状が軽度ですむケースが多いです」

かゆい上に高熱が出るとなると、子供はとてもつらいですね。

感染経路と潜伏期間は?

水疱瘡は、子供が感染するイメージがありますが、感染経路はどのようなものになりますか。

「このウイルスは空気中を漂って感染する能力があるので、同じ空間に一定時間一緒にいるだけで空気感染する可能性があります。発疹の中にもウイルスがいるので、触ることによる接触感染もあります。園や学校で感染しやすいのはそのためです」

ウイルスの潜伏期間はどれくらいでしょうか。

10日〜21日が潜伏期間とされていますが、実際は14日〜16日程度であることが多いです。水疱瘡の人と接触した場合には、3週間くらいは用心した方がいいでしょう」

ちなみに、発疹が出る2日前から、すべての発疹がかさぶたになるまでの間は感染力があると言われていて、そのかさぶたにもウイルスがいる可能性はあるそうです。


登園・登校はNG! 目安は学校ごとに異なる

水疱瘡にかかった場合、登園や登校はできるのでしょうか?

「非常に感染力の強いウイルスですから、水疱瘡になった場合には、学校保健安全法により登園・登校は禁止です。基本的には、発疹がすべてかさぶたになれば登園・登校できます」

「ただし、医師による登校許可書の提出を求めるところもあるので、園や学校側の指示に従いましょう」

発疹がすべてかさぶたになるまでの時間は、個人差はあるものの、目安としては1週間前後です

ワクチンでの予防が重要!

感染力が強い水疱瘡を予防するにはどうすればいいのでしょうか。

「空気感染を防ぐのは困難ですから、ワクチンで予防することが極めて重要です。水疱瘡ワクチンは1歳〜1歳3カ月の間に1回目、そこから半年〜1年の間に2回目を接種します。2回接種した場合の発症予防効果は90%以上ですが、1回のみの接種では免疫不十分で発症リスクが上がります。忘れずに2回目の接種も受けさせてあげてください」

ただ、100%発症を予防するわけではないので、稀にワクチンを打っていても水疱瘡にかかる人もいます。ですが、ワクチンを打っておけば、高熱が出ない、発疹の数が少ないなど、症状が軽く済むケースが多いです。水疱瘡ワクチンは、2014年10月から定期接種になったので、1歳〜3歳の子供は公費で受けられます」

感染が拡大する時期などはあるのでしょうか。

一年中感染する可能性があります。以前は冬から春にかけて患者数が増える傾向がありましたが、定期接種になった2014年以降は、流行に季節性がなくなりました。いつかかるかわからない感染症なので、ワクチンによる予防が大切です」

3歳以上の子供でも、ワクチン接種をしていない場合は受けた方がいいのでしょうか。

「自費にはなりますが、これまでに水疱瘡にかかっていないのであれば、受けさせた方がいいですね。水疱瘡の好発年齢は1歳〜8歳とされていますが、現在はワクチンの定期接種化によって全体的な患者数、特に5歳未満の患者数は減少しています。代わりに6歳〜8歳の患者(定期接種になる以前に生まれた子供)の割合が増えてきています」

水疱瘡は、稀にですが肺炎や脳炎と言った合併症を引き起こすなど、重症化するリスクがある感染症です。赤ちゃんから大人まで感染する可能性があるので、水疱瘡にかかったことがない人は、成人でもワクチンを打つことをおすすめします

「ただし、水疱瘡ワクチンは生ワクチンのため、妊婦や一部の免疫不全者は接種できないので注意が必要です」


重症化しやすい人は?

水疱瘡で重症化しやすいのはどんな人でしょうか。

新生児を含む1歳未満の乳児、12歳以降の学童から思春期の子供、成人、妊婦は重症化しやすいとされています。妊婦の場合は、妊娠中や分娩前後にかかると、生まれてくる子供に感染することがあり、重症化するケースもあります」

水疱瘡にかかったことがなければ、小さな子供に限らず、パパママもワクチンを打っておいた方が良いのですね。

「ちなみに、ワクチンを打っておらず、水疱瘡にかかっていない人が水疱瘡の人と接触した場合、そこから3日以内にワクチンを接種すれば発症を抑えられるとされています。もし発症しても症状が軽度で済むので、家族で感染者が出た場合などに覚えておくといいと思います」

一度かかったらもう感染しない?

水疱瘡にかかった人は、再度感染することはないのでしょうか。

「基本的には再度感染することはありません。しかし、水疱瘡のウイルスは、完治した後も体の神経に潜伏感染します。普段は何も症状が出ませんが、高齢になったり、免疫抑制薬を使用するなど、身体の免疫力が下がったときにウイルスが増殖し、水疱瘡と同じような水ぶくれが出現する『帯状疱疹(たいじょうほうしん)』を発症することがあります

「水疱瘡と違って熱などは出ず、水ぶくれも身体の一部に限局してできることが多いですが、接触感染で人に感染するため、周りの人が水疱瘡になる可能性があります。また、帯状疱疹は強い痛みを伴うケースが多く、その痛みが数週間〜数カ月間続くと言われています」

免疫力が低下してくる50歳以上の人は、帯状疱疹予防のために有料でワクチンを接種することができるのだとか。この場合の接種は1回で有効だそうです。


治療方法と家でできるサポート

水疱瘡になった場合の治療方法を教えてください。

「重症化のリスクがある人には、抗ウイルス薬での治療が推奨されます。それ以外の健康な子供の場合は、抗ウイルス薬を投与するメリットが定かではないため、かゆみ止めの軟膏を処方する、熱が高ければ解熱剤を処方するといった処置が一般的です

家庭でサポートできることはありますか?

「かゆいからと無意識に身体を掻きむしると、その傷口に細菌が感染することがあります。保護者は発疹を掻きむしらないように注意したり、爪を短く切ってあげるといいですね

「皮膚を清潔に保つことも大事なので、元気であれば適宜シャワーや入浴をさせてあげてください。石鹸やボディソープも、よく泡立てて優しく撫でるように洗えば、使用しても大丈夫です。熱があってつらそうなら、身体を濡れタオルなどで拭いてあげるのも良いでしょう」

そのほかに、注意すべきことはありますか?


「もう1つ、発熱の際に使用する解熱剤は成分を確かめてください。子供用に病院で処方されたものなら問題はありませんが、市販薬を使用する場合、成人用は絶対に避けてください」

成人用の解熱剤の中には、子供が水疱瘡にかかっているときに内服すると脳に後遺症を残すものもあります。市販薬を使用する場合は『アセトアミノフェン』と記載されている子供用の解熱剤を使用するようにしてください

成人用解熱剤で使用量を減らすなどしてもリスクは変わらないので、市販薬を使う場合は必ず子供用とし、成分を確認するようにしましょう。

水疱瘡と間違えやすい病気は?

水疱瘡と間違えやすい病気はどういったものでしょうか。

水いぼと手足口病ですね。水いぼはウイルス性の発疹ですが、水疱瘡でできる水ぶくれと見た目が似ています。ただ、赤い発疹はほぼ見られず、熱も出ないので、比較的見分けやすいと思います

「手足口病は、その名の通り、手・足・口に発疹が出る疾患です。ウイルスが数種類あって、その種類によっては身体中に発疹が出ることがあります。熱が出ることもありますし、発疹が水ぶくれになることもあるので、医師でも経過をみなければ診断が難しいことがあります」

受診前は必ず事前連絡を!

症状が出たら早めに受診するのがいいのでしょうか。

「緊急で受診する必要はありません。あわてず日中に病院を受診するようにしましょう。ただ、水疱瘡のような症状が見られる場合は、受診前に必ず医療機関に連絡をしてから受診をお願いしたいです

病院には水疱瘡に感染すると重症化するリスクの高い人がたくさんいらっしゃるからです。ステロイドなどの免疫抑制薬を使用していたり、抗がん剤を使われている方、臓器移植を受けられた方といった免疫不全者は、水疱瘡にかかると重症化しやすいと知られています」

「そのような人たちに感染させないために、病院側も慎重に対応をしています。事前に連絡をしておけば、受診する時間や場所を調整できるので、ご協力をお願いいたします」

感染力が非常に強く、人によっては重症化のリスクも伴う水疱瘡。マスクなどでは感染を防げない疾患なので、受診する際には必ず事前に連絡を入れるようにしましょう。

お話を聞いたのは…

  • 松井俊大(まついとしひろ)さん

    国立成育医療研究センター 生体防御系内科部 感染症科。日本小児科学会専門医、ICD、臨床研修指導医講習会修了。2011年~2012年、聖路加国際病院 初期研修医。2013年~2016年、聖路加国際病院 小児科。2017年から現職。「子どもたちの感染症(特に小児がん等の免疫不全患者さんの感染症)を専門にしています」。

  • 国立成育医療研究センター 感染症科
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ライター紹介

近藤 浩己

1974年生まれ。ライターズオフィス「おふぃす・ともとも」のライター。トラック運転手からネイルアーティストまでさまざまな職を経験。しかし幼い頃から夢だった「書くことを仕事にしたい!」という思いが捨てきれずライターに。美容・ファッション系ライティングが得意だが、野球と柔道も好き。一児の母。

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