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為末大さんに聞く!陸上競技のやりがい&観戦のポイント

2016年8月5日から8月21日まで開催中の「リオ五輪」。世界トップレベルのアスリートたちの姿を見ることで、子どもたちのスポーツへの関心を深めることができそうです。そこで五輪開幕を前に、五輪出場者の方に選手時代のお話と、「リオ五輪」の見どころを伺いました。今回は、シドニー・アテネ・北京と、3大会連続での五輪出場経験がある、為末大さんです。

走るのが得意で楽しかった子ども時代

子どもの頃から足が早くて、走るのが得意だったという為末さん。

陸上をはじめたのは、8歳の頃。そもそも姉が地域の陸上クラブに入っていて、自分も一緒に行くようになったのがきっかけです。走るのが得意だったので、面白かったですね。友達もいて、走ることだけ練習するクラブではなく、バスケットなどいろんなことができたので、楽しく続けられました。」

「その後、小学校の陸上部に入り、走るのが当たり前の環境に。でも、自分の将来について考えることはまだなかったです。中学生の時に全国チャンピオンになり、それ位の頃から本格的に陸上競技に取り組むようになりました。」

日本一になったことに、もちろんご両親は喜びましたが、「五輪を目指しなさい」など、無理に陸上を頑張らせようという姿はなかったそう。

「親はほったらかし主義。両親ともにスポーツの経験はありましたが、『やめてもいいよ』と言われたことはあっても、『頑張りなさい』と言われることは引退する時までなかったです。今思うと、そういう環境がありがたかったですね。」


挫折の中で学んだ、他人より自分と向き合うことの大切さ

その後、為末さんは陸上スプリントトラック種目の世界大会で日本人として初のメダル獲得。シドニー、アテネ、北京と3大会連続で五輪に出場しました。しかし、輝かしい成績の裏には、うまく走れなくて辛い時期もあったそう。

「陸上競技を始めた頃は、自分の人生は可能性に満ちあふれていて、練習を一生懸命やって、天下を取るんだ、と思っていました。けれど、長く続けていくと、思うようにいかないこともある。」

「だんだんもまれていったときに、結局何が一番勝負に影響しているのだろう、そもそもなぜ勝負をしたいのだろう、いかんともしがたいものに出会ったときに、どう現実を捉え直せばいいのだろう…ということを競技人生の中で考えるようになりました。結果、淡々とした性格になりましたね。」

五輪直前に怪我。挑戦する、しないは自分で決められる

その中でも、為末さんの人生に大きな影響を与えた出来事があります。

「五輪出場直前に怪我をしてしまい、その中で五輪予選に出なければならない、ということがありました。状況は相当厳しい。そのときに、“負けるか、負けないか”、“失敗するか、失敗しないか”は結果の話で、“挑戦するか、しないか”は自分の意思で、それは選べるんだ、と気が付きました。」

「それまでは人より速く走ることができ、走るのが楽しかった。でも、競技人生の終盤で、年齢を重ねてきて思うようにいかなくなり、若い選手に負け始めて、というときに怪我をしました。世の中うまくいかないんだ、ということを実感したときに、うまくいかないこともあるけど、だからといって挑戦してはいけない訳ではない、と学びました。その上で、予選会に出場。自分で挑戦できた、というのが大きかったです。」


日本のメダル獲得の可能性も!リオ五輪の見どころ

そんな為末さんに、間もなく開幕を迎える「リオ五輪」の見どころを伺いました。

陸上競技はどちらかというとアートに似ています。今までに見たことのないプレーが出る、誰かが自分の自己ベストを更新するなど、自己ベストと勝敗の2つセットの競技です。勝った、負けた、の喜びはサッカーなどの対戦競技の方が圧倒的にあると思いますが、陸上競技だけは8人中8番目でも自己ベストをクリアしていれば、ガッツポーズをしている選手がいる可能性があります。自分の限界を超えていく、というのが陸上競技の大きな特徴ですね。」

また、陸上競技は自分との精神力との闘いという意味合いが強いのだとか。

「陸上競技の起源は古く、優れた肉体を競うより、優れた精神を競っていたという側面が強いと言われています。誰かに指示されて行う、という時点で優れた精神の証明にならないという文化的背景があります。そのため、現在も競技場に入ってから、コーチから指示を受けてはいけないんです。グランドの上に立つと誰も相談する人はいません。五輪選手といえども不安なので、そういう気持ちも含めて見てもらえると良いですね。」

リオ五輪で特に注目すべき陸上種目は100m走&リレー

リオ五輪で日本選手の活躍が期待されている競技は何でしょうか?

男子100mですね。日本の選手で、初めて100メートル9秒台が出るかということ。日本人の限界が突破される可能性があります。3人くらい並んでいて、可能性としては高いと思います。」

もう1つは、男子400mリレー。前回に続き、メダルを獲得する可能性があります。リレーは走力で差があっても、バトンの受け渡しがうまければその差が埋まる種目。ほんの一瞬だけすれ違う瞬間にバトンが渡る必要があり、そのタイミングが難しく、0.1秒〜0.2秒の間しかありません。日本はバトンパスが上手ですが、過去何回かバトンを落としたこともあるので、手に汗握る展開を見てもらうと面白いなと思います。」

パラリンピックにも注目を!

また、為末さんはパラリンピックにも注目して欲しい、といいます。

ものを使ってあれだけ上手に走るというのは、すごいですよね。とくに生来のブラインドの選手たちは、何をもって真っすぐかが分からない。僕らは人の走り方を見て、ある程度模倣しているので似ている走り方をしています。けれど、彼ら彼女らはまったく見えない中、自分で描いた走り方をしているので、ある意味もっとも自然な走り方をしています。」

パラリンピックの注目の競技は幅跳びだそう。

「ドイツのマルクス・レーム選手という幅跳びの選手は、五輪の選手より遠くに跳ぶ可能性があります。五輪の記録が出た後に、パラリンピックが開催されるので、ぜひ記録に注目して欲しいです。」


他人との比較ではなく、過去の自分との比較が大切

選手を引退した現在、為末さんは、かけっこ教室の運営に携わり、子どもたちにかけっこ指導を行っています

「かけっこのクラブは、どちらかというと走るのが得意じゃない子の方が多いですね。かけっこを苦手に思うのは、結局は他人と比較しているから。同級生はこれ位できていて、私はできていない、というのが苦手の根拠。そこで、過去のタイムといまどれ位速くなったか、という点にフォーカスするようにします。過去の自分と振り返ると必ず何かできるようになっています。」

為末さんたちが主催するかけっこ教室のゴールは、自分自身の成長を感じて、子どもたちにかけっこを通じて自信をもってもらうことなのだとか。

これから五輪を目指す子にも、五輪を目標に掲げる中で、単なる勝敗の結果以上のものを得てほしい、と話します。

「確率的に五輪に出る子は少ない。でも、それを目指して欲しい、という思いはあります。一方で、出ると報われて、出られないと報われないのかというと、そんなこともない。矛盾しているのですが、五輪を目指しているときは、勝つことでしか報われないと思っています。しかし、五輪での戦いを終えて振り返ると、勝利が全てではなかったと思えます。一生懸命何かに取り組んだことが、人生の核を作る。それが一番の財産だと思います。」

自信は全ての子どもが獲得できるチャンスがある

為末さん自身も、中学校の時に毎回休まず部活の練習に参加したことは、大きな自信につながっているそう。

自分が最後まで逃げなかった、最後まで挑戦することを選び続けた、ということは大きな自信につながりました。」

「五輪に出た、メダルをとったというのは経歴としては残りますが、いずれ誰も覚えてなくなってしまう話。競技記録は比較の世界ですが、自信は比較の世界ではありません。そして、メダルは選ばれた人にしか獲得できませんが、自信は全ての子どもに獲得可能なもの。このことが本質的にスポーツから得られる大事なものだと思っています。」

為末さん、貴重なお話をありがとうございました!為末さんが代表を務めるかけっこ教室「TRAC」は東京近郊で開催中。ぜひ1度参加してみては。

お話を聞いたのは…

  • 為末 大 さん

    1978年広島県生まれ。陸上スプリントトラック種目の世界大会で日本人として初のメダル獲得者。男子400メートルハードルの日本記録保持者(2016年7月現在)。2001年エドモントン世界選手権および2005年ヘルシンキ世界選手権において、男子400メートルハードルで銅メダル。シドニー、アテネ、北京と3度の五輪に出場。現在は、自身が経営する株式会社侍のほか、一般社団法人アスリートソサエティ、株式会社Xiborgなどを通じ、スポーツ、社会、教育、研究に関する活動を幅広く行っている。

  • TRAC
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ライター紹介

平野 友紀子

ライター/エディター。温泉ソムリエの資格を持つ、大の旅好き、温泉好き。結婚をきっかけに、オーガニックアドバイザーを取得。0歳と2歳の年子育児をしながら、旅、ライフスタイル、オーガニック、女性の生き方、子育てをテーマに活動中。

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