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「キッズウィーク」いつから開始? メリットやデメリットを解説

掲載日: 2017年9月27日更新日: 2017年9月27日菊地貴広

大学を除く公立の学校で、2018年度からの実施が予定される大型連休制度「キッズウィーク」をご存知でしょうか。夏休みなど、長期学校休業日の一部を別の時期に移動させる新たな制度です。休みが増えるのではなく、地域ごとに運用して休みを分散させるのがポイント。ですが、このキッズウィークには賛否両論あるようで…。今回は、キッズウィークの目的や運用方法、メリットとデメリットなどについて紹介します。

キッズウィークって何? いつから? 目的は?

キッズウィークで家族のお出かけも増える?

「キッズウィーク」は、2018年4月からスタートします。しかし、そもそもなにを目的とし、どのように運用されるのでしょうか。シンクタンク「ニッセイ基礎研究所」の主任研究員として、家族や市民社会などを専門に研究する土堤内昭雄さんに伺いました。

「キッズウィークは、『家庭における子どもと向き合う時間の確保』を目的とする制度です」

「私たちは、教育といえば『学校教育』を想像しがちですが、本来は『家庭教育』『地域教育』と三位一体で機能するものです。ですが昨今は、親と子、特に父親が子どもと過ごす時間が非常に少ない。そんな状況を背景に、家庭教育を充実させるための教育改革として創設されました」

いくら学校が休みになっても、平日なら親は仕事がありますよね。「子どもと向き合う」時間が取れないのでは?

「キッズウィークには、親の有給休暇取得を促進する狙いもあるようです。日本は年間有給休暇取得率が50%前後と非常に低いうえに、過労死が長年に渡って問題視されています。政府が押し進める『働き方改革』と教育改革が結びつき、車の両輪としての役割を果たすことが期待されているのではないでしょうか」

具体的にいつ休みになるのか?

そこで知りたいのが、どの長期学校休業日を短くし、どの時期に休みをつくるのかという点です。

「それについては、地域ごとの実情に合わせて決められます。ただし、その『地域』が市町村単位なのか、県単位なのか、あるいはもっと大きなブロックごとに決められるのかについては、まだ公表されていません。短くなるのは、おそらく一番期間が長い夏休みでしょう」

例えば、夏休みの5日間をほかの時期にずらせば、前後の土・日曜と合わせて9連休になります! 休みの総日数は変わらないものの、気分的にまた別の楽しみになりそうですね。

キッズウィークは経済的なメリットも?

キッズウィークで観光産業やサービス業が活性化する可能性があるそうです

キッズウィークの目的が「家庭教育の充実」であり、「働き方改革」という狙いもあることがわかりました。もうひとつ期待されているのが、経済的なメリットです。

「ゴールデンウィークや夏休みなど、日本の長期休暇は一時期に集中しがち。交通渋滞や観光地の混雑も起きますし、宿泊施設や一部の交通機関はピーク料金として値段が上がってしまいます。休日が分散されることで、その弊害が緩和されれば、旅行やレジャー消費の起爆剤になる可能性があります」

確かに、ひどい混雑の中、高いお金を払って出かけるくらいなら、家でゆっくりしようと考える人もいるでしょう。その点、キッズウィークで休みになるのは通常の平日ですからハードルも低め。どこかへ出かけようという気にもなりそうです。

「ただし、キッズウィークの本来の目的はあくまで家庭教育。働き方改革や経済性ばかりが取り上げられがちですが、そもそもの趣旨を忘れるべきではありません」

ちなみに、土堤内さんが理想とするキッズウィークの運用方法は、より細かく地域を細分化することだとか。

「神社の例大祭など、地域のイベントが開催される時期を休みにして、子どもたちが参加できるようにする。お祭りに行けば、地域の歴史を学ぶきっかけにもなり、ご近所さんや祭りを運営している方々との触れ合いも生まれます。それは、立派な『地域教育』です」

子どもと地域を歩いたり、行事に参加したりすることもキッズウィークの有効な活用法といえそうです。


キッズウィークのデメリットとは?

学校が休みになっても、親が仕事を休めない子どももいます

キッズウィークについては、デメリットもいろいろと議論されています。よく聞かれる意見について、お話を聞いてみました。

子どもに合わせて親が休めるのか

「日本の産業は今、サービス業が大きな割合を占めています。とくに旅行産業に務める方は、むしろキッズウィークこそ稼ぎ時。休んでいる場合ではなくなりますね。ほかの職種であっても、当然休める人と休めない人が出てきます。それはつまり、親が休める子どもと休めない子どもがいるということなのです」

収入が減る人もいる

「有給休暇が正社員に比べて少ない非正規雇用者(パートタイマー、アルバイト、契約社員など)は、キッズウィークに休むことで有給休暇不足になることも想定されます。勤務日数を減らしてキッズウィークを取れば、収入減につながる可能性もあります」

子どもがいない人との不公平感

「キッズウィークという大義名分ができることで、子どもがいる人は休みをとりやすくなるかもしれません。ですが、子どもがいない人はどう感じるでしょうか。育児のための時短勤務でさえ理解が得られにくい職場があるのに、さらなる確執を生む原因になってしまうかもしれません」

それぞれに異なる親の事情を考慮しない制度の未熟さこそが、キッズウィークの最大の問題点だといいます。

「子どもに学校を休ませる」という提案

日本人は家庭教育への意識が低め?

土堤内さんは、1年ほどアメリカで暮らしていた時期に、家庭教育に対するアメリカ人の意識の高さを感じたそうです。

「アメリカでは、平日でも美術館や水族館で親子連れをよく見ました。話を聞くと、親が休みだから子どもにも学校を休ませたと言います。日本では、家庭教育が学校教育の下にあるという意識が根強い。ですが、その2つは本来対等であるべきです」

「あくまで個人的な意見ですが、たまには子どもに学校を休ませ、一緒にどこかへ出かけてもいいのではないでしょうか。遊び目的ではなく、学びにつながるように過ごせば、学校に行くのと同じくらい貴重な家庭教育になります」

確かに今の状況では、平日休みの親は休日を子どもと過ごせません。もちろん、授業の遅れを取り戻すための対策などは必要ですが、一聴に値する意見ではないでしょうか。

運用面でさまざまな問題が指摘されるキッズウィーク。もし予定通りスタートしたら、私たちはどのように向き合えばいいのでしょうか?

「よく言われている9連休がどこかの時期に設けられたとして、それだけの期間を休める人は少ないでしょう。とはいえ、土・日曜の前後で1日か2日でも休めれば、3連休や4連休になります。まずはそこから始めてみてはいかがでしょうか」

「キッズウィークや祝日だけでなく、状況に合わせて休みを取り、子どもと向き合う時間を自分でつくり出すことが理想です。そのためにどうすればいいかを考え、家族でも話し合ってみる。キッズウィークがその糸口になればいいですね」

まだまだ未公表の部分が多く、どのように運用されるのかもわからないキッズウィークですが、家庭教育や働き方について考えるきっかけにはなりそうです。

お話を聞いたのは…

  • ニッセイ基礎研究所 土堤内昭雄さん

    京都大学工学部建築系学科卒業後、建設会社勤務を経て1985年にマサチューセッツ工科大学大学院高等工学研究プログラムを修了。1988年にニッセイ基礎研究所へ入社。「少子高齢化・人口減少とまちづくり」「コミュニティ・NPOと市民社会」などに関する調査・研究、講演・執筆活動を行うかたわら、順天堂大学国際教養学部非常勤講師(2015年度~)、東京都千代田区男女平等推進区民会議委員(2005年~)などを務める。著書に『父親が子育てに出会う時』(筒井書房)、『「人口減少」で読み解く時代』(ぎょうせい)など。

  • 土堤内昭雄の研究員の目
  • ニッセイ基礎研究所
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ライター紹介

菊地貴広

編集プロダクション・しろくま事務所(http://whitebear74.jimdo.com)代表。2014年に出版社から独立し、ファッション、グルメ、ビール、猫、タレント本など幅広く活動。2015年11月に男子が誕生し、息子に夢中。その成長を見るたびにフルフルと感涙する日々。

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