「子どもの運動神経を伸ばしたい」と願って、スポーツ教室などに通わせている親は多いはず。ただ、運動神経とはそもそもなんなのか、親の運動神経が子どもに遺伝するのかなど、よくわからないのも事実。そこで、子ども運動教室「リトルアスリートクラブ」の代表トレーナー・遠山健太さんに「運動神経」について伺いました。
スポーツ選手でも運動神経がいい人ばかりじゃない!?

「運動神経が良い・悪い」という言葉をよく耳にしますが、そもそも「運動神経」とはなんでしょうか?
「一般的に『運動神経』とは、走る・投げる・蹴る・飛ぶといった基本的な運動スキルのバランスが取れている状態を指します。小学校の体育などでは、いろいろな動作をそつなくこなすことができ、先生の指示通りに動ける子は『運動神経が良い』と言われていますね」
特に練習をしなくても持ち前のセンスで動ける人って確かにいますよね。やっぱりスポーツ選手になるような人は、生まれつき運動神経が良いのでしょうか?
「トップアスリートでも必ずしもすべての運動が得意なわけではないんですよ。例えば、スキーでオリンピックに出場するほどの腕前でも、ボール投げはまったくできない人もいます。それは、子どもの頃からスキーの練習はしていても、基本的なボール投げの動作を経験していないから。運動神経の良し悪しは、子どもの頃に様々な運動スキルを習得する経験をしたかどうかがポイントなんです」
運動神経とはバランス感覚や判断力といった総合的な運動スキルの高さを指すので、ひとつの運動能力に優れたスポーツ選手は、必ずしもオールマイティに「運動神経が良い」わけではないのですね。
運動神経は遺伝しない! 小さい頃からの運動環境が大事

運動神経は親から遺伝するのでしょうか?
「運動神経は遺伝よりも環境が重要だと言われています。もちろん親子でスポーツ好きな人もいますが、そもそも運動神経が良い両親の子どもは、小さい頃から親が積極的にスポーツをさせるなど、運動をする環境が整っていることが多いです。逆に言えば、両親共に運動が苦手でも、環境さえ与えてあげれば、何もしていない子よりも伸びる可能性があります」
運動神経を伸ばすために大事なのは、遺伝よりも環境なのですね。親が運動音痴だとしても諦める必要はなさそうです。では、どうやって運動環境を与えてあげればいいですか?
「小さい頃からできるだけたくさん外遊びの経験をさせてあげましょう。体を使って遊ぶことで自然と運動スキルが身についていきます。鬼ごっこのルールを変えてみるだけでも、運動スキルにバリエーションが出ます。逃げる範囲を広げれば持久力が伸び、狭くすると急な方向転換や短い距離のダッシュがうまくなります。特定の色を探して逃げる『色鬼』や高い場所に逃げる『高鬼』にすると、判断力や視野が広がったり、高いところによじ登ったりする動作も加わってきますね」
運動神経を伸ばすために特別なものを用意する必要はなく、普段の遊びの中でもルールを工夫することで、さまざまな体の動かし方を子どもに教えることができるのですね。
習い事は同時に複数のスポーツを習うのがベスト!
では、スポーツの習い事をするとしたら何がおすすめですか?
「1日体験などを利用してさまざまなスポーツをさせて、子どもが興味を持ったものに取り組めばいいと思います。いきなり、プロを目指して専門的な種目を早々と1本に決める必要もありません。習い事+趣味でもいいので、複数のスポーツを同時にやることをおすすめします。たくさんのスポーツを同時に体験することで、より多くの体の動きを習得し、運動神経が伸ばせます」
小学6年生頃までは、多くのスポーツをやらせて、本格的に一つに絞るのは中学生になってからでも遅くないそう。運動神経を伸ばすためには、最初から1つの種目を極めるよりも、まずは運動の楽しさを知り、さまざまな運動に挑戦することが大切なようです。
「習い事に限らず、楽しい遊びやスポーツをするなかで気づいたら運動神経が鍛えられているのが理想です。一つのスポーツができないと『自分は運動神経が悪いんだ』と思い込んでしまいがちですが、走るのが得意な子もいれば回転技が得意な子もいるんです。もしかしたら今とは別の場所にすごくハマるものがあるかもしれないので、子どもと一緒に得意な運動分野を探して運動の楽しさを教えてあげることが大切ですね」
運動神経は生まれ持った才能ではなく、小さい頃からの運動経験で磨かれていくものなのですね。まずは、子どもと一緒に外で思いっきり体を使って遊んでみてくださいね。