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「150万円の壁」って何? 「103万円の壁」との違いを簡単解説!

掲載日: 2018年6月25日更新日: 2018年6月25日別当 律子

パート勤務の人にとって、最近起きた大きな変化の一つに「103万円の壁が150万円の壁に変わった」ことが挙げられます。これは配偶者控除及び、配偶者特別控除の見直しが行われ、2018年1月以降の大幅な制度改正によるものです。

とはいえ、税金の専門家である税理士の間でさえ、「制度改正で複雑さが増した」と意見が出るほど、わかりづらい制度でもあるようです。

そこで今回は、新制度について詳しい梅本正樹さんにわかりやすく解説していただきました。税理士やファイナンシャルプランナーとして活躍するほか、著書「知らないと損をする配偶者控除『つまりいくらまで働ける?』がわかる本」(秀和システム)なども手がけています。

まずは基本的な配偶者控除の仕組みをチェック!

まずは、「配偶者控除」と「配偶者特別控除」の違いを教えてください。

『配偶者控除』を一言で表現すると、専業主婦で勤労所得がない場合や、所得があっても一定の基準内である配偶者を持つ納税者(世帯主)の税金を安くする制度です

「これまでの制度では、例えば夫が会社員(納税者)で妻がパート勤務(配偶者)の場合、配偶者のパート収入が103万円以下であれば、納税者本人の所得から原則として38万円の所得控除を受けることができました」

「一方、『配偶者特別控除』は、配偶者控除の設定している条件よりも所得がやや高い配偶者を持つ納税者に対して、税金を安くするための制度です

「これまでの制度では、配偶者のパート収入が103万円を超えた場合、配偶者控除が受けられなくなる代わりに『配偶者特別控除』が適用されることで、パート収入が141万円までであれば、納税者本人の所得から原則として38万円の所得控除を受けることができていました」

「『原則として38万円』と言いましたが、これは納税者本人と配偶者の収入の多寡や年齢に応じて金額が変動するためです。それが今回の改正で、パート収入が201万円までであれば、原則として38万円の所得控除が可能になりました」

パートで働く場合、よく年収の壁が問題になりますが、そもそもどういったものなのでしょうか?

年収の壁とは、その年収に達したり超えた場合に、税金や社会保険料が増えたり、納税者本人の給料が下がったりする限界収入点を『壁』に例えたものです。つまり、多く働くことによって、かえって手取りが減ってしまうので、その壁は超えないようにしようという意識が働く収入の境界線のことです」

103万の壁&130万の壁って何? 知識ゼロでもわかる「収入の壁」

「たとえば、これまでの制度でいえば、妻のパート収入が103万円から103万4000円になった場合、世帯収入は4000円増加します。ですが、今度はそれまでかからなかった所得税が妻にかかるようになり、結果として世帯手取収入は4000円も増加しませんでした」


今回の改定でどこが変わった? 具体的な影響も紹介

では、今回の改正では何が大きく変わったのでしょうか。「103万円の壁が150万円の壁になった」と言われますが、具体的にはどういうことでしょうか?

従来は、配偶者のパート収入が103万円を超えると配偶者特別控除額が減少し始めていました。ですが、2018年からは配偶者のパート収入が150万円までは配偶者特別控除額は減少せず、150万円を超えると配偶者特別控除額が減少するという改正が行われました

「つまり、限界収入点が150万円に設定されたことで、今まで配偶者特別控除を意識して103万円以内に収入を抑える働き方をしていた人でも、税収面では150万円まで気兼ねなく収入を増やすことができるようになったわけです。2018年に制度改定が実施されたと言いましたが、この制度は2018年の収入から適当されます」

制度改定でどの程度影響が出るのかは、世帯年収によって異なります。世帯年収別のシミュレーションが以下の表に示されています。また、表中の「所得」とは合計所得金額を意味しています。

【制度改定の影響シミュレーション】

表:制度改定の影響シミュレーション

新制度では、税金面で年収の適用限度枠以外に何か変更になったのでしょうか?

年収の限度枠以外にも、配偶者控除額が従来の固定制ではなく変動制になりました。また、配偶者特別控除額も従来の単純な一系統10段階のみの控除額ではなく、3系統30段階の小刻みな控除額に改正されました。このあたりは大変複雑な仕組みに変わったので、理解するのに骨が折れる部分でもあります」

世帯主の合計所得金額別に表1〜4にまとめたものが以下になります。

【表1】世帯主の合計所得金額が900万円以下(年収1120万円以下)の場合

表1

【表2】世帯主の合計所得金額が900万円超950万円以下(年収1120万円超1170万円以下)の場合

表2

【表3】世帯主の合計所得金額が950万円超1000万円以下(年収1170万円超1220万円以下)の場合

表3

【表4】世帯主の合計所得金額が1000万円超(年収1220万円超)の場合

表4

具体的には、【表1】のように、世帯主の合計所得金額が900万円(年収ベースだと1120万円)以下なら、満額の控除(38万円)の対象となりますが、【表2】【表3】のように900万円超だと控除が段階的に引き下げられ、【表4】のように1000万円(年収ベースだと1220万円)を超えると配偶者の収入額にかかわらず控除額がゼロになります

「夫=納税者、妻=配偶者のケースが多いかと思いますが、夫の所得が1000万円を越える場合には、そもそも配偶者控除の対象外になるので、妻は年収の壁を気にして働く必要はなくなったわけです」


配偶者控除制度の主な変更点をまとめてチェック!

主婦でパート勤務をしている人が、配偶者控除の枠の中で働くことを希望した場合、働き方で気を付ける点や、意識した方が良いことはあるのでしょうか?

配偶者控除の枠の中で働くことを希望する場合は、あまり神経質になる必要はありません。ただし、配偶者特別控除の枠の中で働くことを希望する場合は、次のような点に注意してください

配偶者のその年の収入はどれくらいになる予定か

配偶者の収入が増加するにつれ、ケースによっては様々な「壁」の影響を受けることになります。

たとえば、急に税金が増えたり、急に社会保険料が増えたり、急に配偶者手当が減ったりする場合があります。

納税者(世帯主)はどの社会保険制度に入っているか

納税者(世帯主)が社会保険加入者であるか国保・国年加入者であるかなどの違いにより、配偶者の収入が増加した際の世帯可処分所得に差が出てきます。

たとえば、配偶者が「106万円の壁」や「130万円の壁」を超えた場合、納税者(世帯主)が社会保険加入者である方が、国保・国年加入者であるよりも世帯可処分所得が減少することになってしまいます。

納税者(世帯主)の給料の中の配偶者手当の支給基準はどのようなものか

夫の会社から配偶者手当が出ている場合には、その支給基準を必ずチェックしてください。

たとえば、従来103万円に設定されており、今回の制度改正を受けてもその金額が変わらない場合には、103万円を超えて働くと、配偶者手当の支給がストップしてしまいます。

配偶者のパート先の企業規模はどの程度か

パート先の企業規模によって、社会保険上の「106万円の壁」に該当するか「130万円の壁」に該当するか異なってきます。そのため、これらの金額に応じた働き方をする必要が出てきます。

また、今回の制度改正の要点をまとめると以下のようになります。

【制度改正の要点まとめ】

  • 納税者(世帯主)が一定額を超えた高額所得者の場合、控除が受けられない、または控除額が減額する
  • 配偶者は、150万円まで配偶者特別控除の枠を気にせず働けるようになった
  • 配偶者の年収が141〜201万円だった場合、これまで受けられなかった配偶者特別控除の対象となるため納税者(世帯主)税金負担が減る

こうした制度は、「知らないと損をする、知っている人だけ得をする」場合がほとんどです。難しいことも多いですが、しっかり学んで賢く生活に活かしましょう。

お話を聞いたのは…

  • 梅本 正樹さん

    税理士・ファイナンシャルプランナー・社会保険労務士・中小企業診断士。1960年生まれ。石川県金沢市出身。大阪府立大学経済学部経営学科卒業。複数資格によるシナジー効果を生かし、延べ1,000を超える案件でシニア世帯の家計健全化に貢献。他の保有資格は宅地建物取引士(有資格者)。著書に「シニアのなっとく家計学」(水曜社)、「起業・法人化を考えた時に読む本」(彩図社)。

ライター紹介

別当 律子

フリーランスの編集者・ライター。出産をきっかけに育児雑誌のライターに転向し、その後子どもとのお出かけ情報を中心に雑誌、本、絵本、web媒体等で執筆。保活、中学受験、部活や留学サポート等々を経験した今だからこそわかる、話せる子育て情報を発信中。

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