立つ前の赤ちゃんがしているイメージが強い「ハイハイ」。でも実はオリンピック選手の室伏広治さんをはじめ、アスリート選手がハイハイトレーニングを取り入れているのだとか。そこで、ハイハイと運動能力の関連性について、小児専門の理学療法士でコア(体幹)コンディショニングトレーナーの山野井えみ先生に伺いました。
ハイハイをすると運動能力が高まるというのは本当ですか?
「赤ちゃんが生まれてから1歳になるまでの過程で覚えていく、寝返り・ずりばい・ハイハイなどの運動は、体幹機能を高めて人間が最大限の力を引き出せる姿勢と運動能力を身につけさせてくれます」と山野井さん。
「体幹とは、頭と手足を除いたお腹の部分を指し、身体のコア(中心)となる部分です。体幹をしっかり使えると手足をラクに、スムーズに動かすことができます。ハイハイは腹筋など身体の中心の筋肉を使って手足の位置や身体のバランスをコントロールしながら動くことで、体幹を鍛えることができます。」
体幹を鍛えると無駄のないしなやかな動きができるようになるそう。その結果、自然で効率良い動作を行えることから、スポーツ選手もハイハイの運動を取り入れているんですね。
「一番多いのが、転んだ時に手が出ないことです。ハイハイをしていると、手を出して自分の身体を守りながら動くということを経験ができます。しかし、ハイハイをあまりしていないと、とっさに転んだ時に手で支えるという感覚が弱く、顔をケガする子どもを保育園で良く見かけます。」
また、体幹が発達していないため姿勢が悪い、ボールを投げたり、走ったりするのが苦手、といった場合があります。」
ずりばいはするけれど、ハイハイはしないという赤ちゃんもいます。その違いはあるのでしょうか?
「お腹をつけた状態のずりばいは肘を使って前に動いていくので、肩周りの筋肉が鍛えられます。ハイハイは手のひらをつき、肩で支えながら肘でコントロールして進んでいきます。手のひらでしっかり踏ん張ることで、手の筋肉がしっかりと使えるようになります。そのため、手先の器用さにも関係してきます。」
ハイハイは体幹を鍛えるだけでなく、さまざまな部分に影響するんですね。
「ハイハイには歩くために必要な要素がいっぱい入っているので、なるべく長い期間ハイハイすることが重要」と山野井さん。しかし、最近はハイハイをあまりしない赤ちゃんが増えているそう。
「現代はフローリングの生活になり、赤ちゃんを床でゴロゴロさせることが少なくなっています。そのため、うつぶせや寝返りの経験をあまりせずに、首が座ったらすぐにお座りする赤ちゃんが増えているんです。こうした環境の変化が、統計上、ハイハイをしなかった子どもが増えている理由の1つだと思います。」
畳の部屋がなければ、ジョイントマットを敷くなど、まずは赤ちゃんがハイハイをしやすい環境を整えてあげたいですね。
また、赤ちゃんがハイハイをするには、その前段階である「うつぶせ」の姿勢を正しく覚えることが重要なんだとか。
「ハイハイの原点はうつぶせです。うつぶせをすると筋肉がつくので、うつぶせが得意な子どもはハイハイにスムーズに移行しやすいです。1カ月健診が終わった後から、うつぶせをさせるようにしましょう。」
「うつぶせにさせる際に、手がただ広がっている状態では赤ちゃんは頭をあがることができません。肩の下に肘を持ってきて、脇を締めるような状態にすると、頭をあがりやすくなります。大人もやってみると分かりやすいですよ。」
ハイハイにつまずいている子どもの共通点は、うつぶせが嫌いだった、あまりしていなかった、ということが多いそう。まずは正しいうつぶせの方法をマスターすることが大切です。なお、うつぶせにさせる際は、窒息しないように必ず側で見守りましょう。
「身体の感覚は小さい時の方ができやすいですが、訓練をすればその子が持っている能力を高めてあげることができます。例えば、ハイハイでトンネルをくぐるなど、赤ちゃんの時の運動にもう一度戻るトレーニングをするといいでしょう。」
「昔から保育園や幼稚園などで伝統的に行われている、ずりばいやハイハイの動きを取り入れた『リズム体操』もおすすめです。」
リズム体操は、ウェブサイト上でもたくさん紹介されているので、参考にしてもいいですね。
このほか、赤ちゃんの運動がベースとなった「ピラティス・ヨガ」もおすすめとのこと。よつばいの動作で手足をあげるなど、簡単なポーズは2歳〜3歳になれば一緒にできるそう。親子クラスに参加してもいいですね。
それにしても、簡単そうに見えるハイハイが体幹トレーニングに繋がるとは驚きでした! 季節は秋。「スポーツの秋」に、赤ちゃんがいるご家庭はもちろん、すでに歩けるお子さん&パパママも、ここで紹介した運動で体幹トレーニングに励んでみてはいかがでしょう。
体幹トレーニングにもつながるハイハイ

「赤ちゃんが生まれてから1歳になるまでの過程で覚えていく、寝返り・ずりばい・ハイハイなどの運動は、体幹機能を高めて人間が最大限の力を引き出せる姿勢と運動能力を身につけさせてくれます」と山野井さん。
「体幹とは、頭と手足を除いたお腹の部分を指し、身体のコア(中心)となる部分です。体幹をしっかり使えると手足をラクに、スムーズに動かすことができます。ハイハイは腹筋など身体の中心の筋肉を使って手足の位置や身体のバランスをコントロールしながら動くことで、体幹を鍛えることができます。」
体幹を鍛えると無駄のないしなやかな動きができるようになるそう。その結果、自然で効率良い動作を行えることから、スポーツ選手もハイハイの運動を取り入れているんですね。
ハイハイをしなかった子どもは転んだ時に手が出ない
ハイハイが運動能力向上に繋がることはわかりましたが、逆にハイハイをあまりしなかった子どもはどんな影響があるのでしょうか?「一番多いのが、転んだ時に手が出ないことです。ハイハイをしていると、手を出して自分の身体を守りながら動くということを経験ができます。しかし、ハイハイをあまりしていないと、とっさに転んだ時に手で支えるという感覚が弱く、顔をケガする子どもを保育園で良く見かけます。」
また、体幹が発達していないため姿勢が悪い、ボールを投げたり、走ったりするのが苦手、といった場合があります。」
ずりばいはするけれど、ハイハイはしないという赤ちゃんもいます。その違いはあるのでしょうか?
「お腹をつけた状態のずりばいは肘を使って前に動いていくので、肩周りの筋肉が鍛えられます。ハイハイは手のひらをつき、肩で支えながら肘でコントロールして進んでいきます。手のひらでしっかり踏ん張ることで、手の筋肉がしっかりと使えるようになります。そのため、手先の器用さにも関係してきます。」
ハイハイは体幹を鍛えるだけでなく、さまざまな部分に影響するんですね。
ハイハイをしやすい環境づくり&サポート法

「現代はフローリングの生活になり、赤ちゃんを床でゴロゴロさせることが少なくなっています。そのため、うつぶせや寝返りの経験をあまりせずに、首が座ったらすぐにお座りする赤ちゃんが増えているんです。こうした環境の変化が、統計上、ハイハイをしなかった子どもが増えている理由の1つだと思います。」
畳の部屋がなければ、ジョイントマットを敷くなど、まずは赤ちゃんがハイハイをしやすい環境を整えてあげたいですね。
また、赤ちゃんがハイハイをするには、その前段階である「うつぶせ」の姿勢を正しく覚えることが重要なんだとか。
「ハイハイの原点はうつぶせです。うつぶせをすると筋肉がつくので、うつぶせが得意な子どもはハイハイにスムーズに移行しやすいです。1カ月健診が終わった後から、うつぶせをさせるようにしましょう。」
「うつぶせにさせる際に、手がただ広がっている状態では赤ちゃんは頭をあがることができません。肩の下に肘を持ってきて、脇を締めるような状態にすると、頭をあがりやすくなります。大人もやってみると分かりやすいですよ。」
ハイハイにつまずいている子どもの共通点は、うつぶせが嫌いだった、あまりしていなかった、ということが多いそう。まずは正しいうつぶせの方法をマスターすることが大切です。なお、うつぶせにさせる際は、窒息しないように必ず側で見守りましょう。
今からでも遅くない!? 歩ける子どももハイハイしよう!
もし、赤ちゃんがハイハイをあまりしないで歩いてしまった場合でも、スポーツ選手のトレーニング同様、ハイハイをすることで体幹を鍛えることはできるそう。「身体の感覚は小さい時の方ができやすいですが、訓練をすればその子が持っている能力を高めてあげることができます。例えば、ハイハイでトンネルをくぐるなど、赤ちゃんの時の運動にもう一度戻るトレーニングをするといいでしょう。」
「昔から保育園や幼稚園などで伝統的に行われている、ずりばいやハイハイの動きを取り入れた『リズム体操』もおすすめです。」
リズム体操は、ウェブサイト上でもたくさん紹介されているので、参考にしてもいいですね。
親子で一緒に体幹を鍛えよう
ただ、すでに歩き出した子どもにハイハイをさせようとしても、なかなか思うようにしてくれないことも…。そんなときには親子で一緒にできる体幹トレーニングがおすすめ。子どもとのふれあいにも繋がり、楽しく取り組めます。山野井さんに伺った、自宅で簡単にできる体幹トレーニング方法をご紹介します。- 手押し車
子どもの両足を親が持ち、手の力だけを使って前に進む。
- 寝返りごろごろ
手足を伸ばした状態で、畳やマットの上でごろごろ右左に転がる。
- 蹲踞(そんきょ)座り
和式トイレ座りとも言われ、爪先立ちでかかとの上にお尻を載せて腰を降ろして座る。股関節を柔らかくする効果も。
このほか、赤ちゃんの運動がベースとなった「ピラティス・ヨガ」もおすすめとのこと。よつばいの動作で手足をあげるなど、簡単なポーズは2歳〜3歳になれば一緒にできるそう。親子クラスに参加してもいいですね。
それにしても、簡単そうに見えるハイハイが体幹トレーニングに繋がるとは驚きでした! 季節は秋。「スポーツの秋」に、赤ちゃんがいるご家庭はもちろん、すでに歩けるお子さん&パパママも、ここで紹介した運動で体幹トレーニングに励んでみてはいかがでしょう。