今年2015年は6月の浅間山や9月の阿蘇山など、全国各地で噴火が起こっています。首都圏で暮らしていると、あまり身近なできごとには感じられない分、いざ噴火が起きたときにどう対応すればいいのかは悩むところ。火山灰から子どもを守る方法や対処法などを、防災科学技術研究所の棚田俊収さんに聞きました。
首都圏居住者が注意すべきは「火山灰」の影響

富士山や浅間山など、関東平野をとりまく火山はいくつか存在し、活火山である以上、これらの火山が噴火する可能性はゼロではありません。火山から離れた地域では噴石や火砕流などの直接的な影響はないとはいえ、もし富士山が1707年の宝永噴火のような大噴火をしたとすれば、2週間近く火山灰が降り続け、100km以上離れている東京都心でも2cm〜10cmの火山灰が降り積もると予測されています。
火山灰とは、火山岩が粉々になった細かい粒子(直径2mm以下のもの)のことで、降り積もった直後の火山灰粒子は、酸性の被膜に覆われていて、健康被害の原因となることが知られています。
火山灰が健康に与える影響には、呼吸器系への影響、目の症状、皮膚への刺激などがありますが、特に注意したいのが、呼吸器系への影響。のどの痛みやせきが増えるほか、呼吸によって肺の奥まで入ると、気管支炎やぜんそくの発作を引き起こすことがあります。
また、火山灰は交通網の麻痺や停電などを引き起こすこともあります。「火山が噴火しても自分には関係ない」と思わず、その影響範囲や火山灰から身を守る方法を理解しておくことが大切です。
気にしたほうがいいのは「噴火の規模」と「風向き」
火山灰がどれだけ降るのかは、火山と自宅との距離以上に、噴火の規模と風向きが重要だと棚田さんはいいます。
「首都圏に近い火山かどうかというよりも、気にしたほうがいいのは噴火の規模と風向きです。富士山や浅間山のような首都圏に近い火山であっても、小さい噴火であれば影響はありません。たとえば、今年2015年6月に起きた箱根山の噴火は小規模だったため、小田原まで火山灰は飛びませんでした。一方、距離の離れた桜島で噴火が起きた場合でも、噴火の規模や風向きによっては首都圏まで火山灰が飛んでくる可能性があるんです。」
噴火が起きたときには、その火山と自宅との距離に関わらず、気象庁が発表する降灰予報やマスコミの報道などを見て、噴火の規模や風向きなどを確認しておくといいそうです。
外出中に火山灰が降ってきたときの対処法は?

実際に火が起きて火山灰が降ってきたら、まずはどうするのがいいのでしょうか。
「外にいるときに火山灰が降ってきたら、大きめのタオルなどで子どもをおおって、火山灰に触れたり、吸いこませないようにするといいでしょう。」
マスクをするのが一番ですが、もしマスクがなければ火事で煙を吸いこまないようにする「ハンカチを濡らして口にあてる」方法も効果的だとか。
「火山灰にふくまれる火山ガスは水分に溶けてしまうため、濡れたハンカチで口元をガードしておけば肺への侵入を防いでくれます。気管支が弱いお子さんにはやってあげるといいでしょう。特に、火口に近い場合は、噴火の規模にかかわらず息をするだけで喉が痛くなりますから、十分気をつけてください。」
火山ガスには硫黄成分が含まれるため、温泉の匂いがすると感じたら、念のために濡らしたタオルやハンカチで鼻と口をふさぐのが賢明です。
「家のなかにいるときは、窓を閉めて火山灰が入ってこないようにすれば大丈夫です。マンションなどについている24時間換気システムは切っておいてください。」
火山灰をこわがりすぎず、基本は砂と同じ対処法を
もし火山灰を吸ってしまった場合も「すぐに病院へ連れて行かなくてはいけない、というほどではなく、帰宅時にうがいをすれば大丈夫」と棚田さんはいいます。しかし、場合によっては気管支炎になってしまうこともあるため、日ごろの子どもの状態とちがうと感じたら、病院を受診することをおすすめします。
また、火山灰が子どもの肌についたり目に入ったとしても、必要以上にこわがらず、基本的には水で洗い流せばいいとのこと。
「火山灰の粒子は細かくとがった結晶質の構造をしているため、目をこすると傷つけてしまうおそれがあります。もし目に入ったら、こすったりせずに水で洗い流してください。髪の毛や体についた場合も、シャワーを浴びるなどして洗い流せば大丈夫。服についた火山灰は家に入る前に払い落としてください。砂遊びをしていて、体に砂がついたときや、目に入ってしまったときと同じだと思ってもらえればいいですね。」
親子で防災知識を身につけていざという時に備えよう!
火山灰対策には、防じんマスクやゴーグルなどのグッズも販売されていますが、「特別なグッズを用意するよりも、日常生活に使う範囲のものでいい」と棚田さん。
「噴石や溶岩流などの直接的な影響のない首都圏の場合、常に防じんマスクを持ち歩くのも大変なので、市販のマスクやタオルなどをバッグに入れておくくらいでいいでしょう。」
また、事前に正しい知識を身につけることも防災につながります。「防災科学技術研究所」では火山に関する最新情報を掲載した「火山情報WEB」で健康被害についてのしおりを公開しているほか、子供向けの教育サイト「こどものページ」もあるので、親子で火山災害について学んでみてもいいですね。
火山情報WEBそのほか、火山灰対策を知るひとつの方法として、桜島のちかくに暮らすママたちの情報を調べてみるのもおすすめとのことです。
いざというときに慌てないよう、日ごろから基本的な防災知識を身につけておきたいものですね。